第5章 Investigative
彼女はとろんとした顔でこちらをみて微笑んだ。
「(あぁ)」
その顔を寧ろもっと見たい。
だが、決して彼女は絶世の美女ではない。
彼女の目鼻立ちは特段劣るところは無いが、この船にいる女と比べたら『名前』は負けてしまうだろう。
胸もふくよかではないし、バカラのほうが余裕で大きい。タオルの膨らみからみても小さいほうに入る。
『名前』の服装が映える脚はまあ長いし太くもないがもっといいスタイルをもつ女は余裕でいる。
__だが、『名前』にはそのどれよりも負けない 何か を持っている。それだけは確かだ。
その 何か はわからない。
テゾーロはステラを一途に思っているとはいえど、経験人数は申し分ないほどある。
彼の魅力に惹き付けられる女は数しれず。女に飽きないことは確かだ。
そんな彼だというのに、1人の 元奴隷 に彼は心を捕われていた。
「いつもその顔でいればいい」
「……はい?」
ふと出てしまった言葉にハッとしたが、目の前の彼女は 何言ってんだこいつ と言わんばかりの顔でテゾーロは笑ってしまった。
そんな彼の心境など知らない『名前』はますます疑問を抱く。
「?!なんですか変なこと言ったと思えば笑いだして、そんなに疲れてたんですか」
「くく……心配しているようなことを言う割には顔は真逆だな」
『名前』は彼に呆れて冷ややかな目を向けた。
「それにしても男と二人きりで入ることには慣れているのか?」
「なんでですか?」
「普通の女なら、恥ずかしがるものだろう?」
『名前』は あー…… と言い目を伏せた
「奴隷の時にそういうのはもう……」
「!そうか、悪い」
彼はそれ以上は聞かなかった。
『名前』はそんなテゾーロに対し、気を使ってくれたのか と思い顔を上げ彼の方を見る
「違、いいんです!その、慣れたってだけで……」
「……」
「あ……すみません」
__あぁ彼もそういう過去があったんだった。
テゾーロの過去のことを思い出した『名前』はそれ以上もう言わなかった。
お互いにその話はキツイということがわかったからだ。
そうして数分後、テゾーロは『名前』の背中にある蹄に目を向けた。
彼女の背に痛々しそうにある蹄。
逃げれたとはいえこれは今後隠していかなければならない。