第4章 勤務初日
「!あ、あぁ」
瞬間 彼は『名前』から素早く離れた。
素直に言うことを聞くテゾーロ。さっきまでの態度は何処へ行ったんだと聞きたいくらいだ。
だがそんなことを聞けないくらいに彼の目は子犬のようになっている。
「怒ってないですから!寧ろ私が悪いんですし」
「だが……」
異常に弱気になる彼に『名前』はつい感情を高ぶらせてしまった
「〜っあぁもう!さっきから何なのその態度!……それでも黄金帝でしょう?!」
「!?」
『名前』はそのまま勢いで彼に説教をする
「何をそんなに臆しているのかは知らないけれど……堂々としろ!それでもこの船の……いや国のトップかっての!」
「……」
『名前』が我に返った時にはもう遅く、目の前の彼はぽかんとした顔のまま固まってしまっていた。
流石に『名前』も焦ったが数秒後、彼は突然大笑いをしたので今度は『名前』が固まった。
「ははははは!……本当に……面白いな!」
「……えぇ」
(怒鳴ってしまったのには焦ったけど心配しなくて良かったなこれ)
威厳利かしたり突然弱気になったり笑いだしたりと情緒不安定な彼に『名前』は冷たい視線を向けた。
そんな視線をものともせずひとしきり笑った後彼は『名前』の頭を撫でた
「!?」
「__お前を手に入れて正解だった。この世でこんなに面白いのに出会ったのは初めてだ。」
「……そりゃあどうも」
彼の言葉を聞き『名前』は確信を得た
(そういえば初対面から気取らずに容赦なく接してて殺されてない訳だから、こんなことしてもOKだったわ)
そう考えると現実よりこっちの世界もいいかも。
……だが
「そういえばさっきの半べそかいてた顔面白かったぞ」
「!うるっさ……」
「 金 像 にして売れば確実に言い値がつく顔だ」
__常に命懸けである点を除けば!
「絶対嫌ですっていうか、 お 断 り させていただきます」
「くく、そんなに嫌か」
「嫌に決まってんでしょ!マゾにも程があるわ!」
それに私は元々、この世界をずっと違う視点で見てきていたから知ってるんだ。彼の設定では……
__彼は、心の底では誰も信用していない、だからいつでも彼は私を裏切るんだと。
「?どうした」
彼はニンマリと笑みを浮かべ顔を覗き込んできた
「……なんでも」