第4章 勤務初日
「へぇ、私は今どんな顔なんだ」
「っ……しいて、いうなら」
そう聞けどもテゾーロは肩を掴む手の力は一切緩めない。
痛みに堪えながら『名前』は言葉を捻り出した。
「怒って、る相手に……する……顔じゃ、ない」
「……ほう」
(そんな顔をしているのか、私は。)
シンプルにそう思い、そしてこの状況が楽しく感じたテゾーロはニンマリと笑みを浮かべた。
その様子を気味悪そうに『名前』は見つめる。
だが、だんだん涙をうかべる彼女をみてテゾーロは ハッとして、肩を掴む手の力を抜いた。
「!」
「悪い、やり過ぎた」
金像にされるだろうと覚悟していた『名前』はそっちに驚いて目をまた見開いた。
でも痛かったのは事実で、痛いのをわかっていて受けていた天竜人からの拷問とは違い予測出来なかった痛みはジンジンと残る。
掴まれた肩を摩り気を紛らわそうとした。
「……」
「大人げなかった、私の落ち度だ。」
そういう彼の声は『名前』には全く耳に入ってなかった。
ただただ、(肩痛てぇ!)としか考えていなかったし、冷えピタでも頼もうかなしか頭に無かったのである。
だが傍から見れば暴力を振るわれ黙り込んだ女にしか見えないわけで、テゾーロも勿論 『名前』の心中に気づくわけがない。
暫く考えた結果、テゾーロは彼女を抱きしめるに至った。
「……っん!?」
とうの『名前』は突然抱きしめられて訳が分からず、驚くしか出来ない。
だがどうであれ、テゾーロの脳内でどうすればいいのか考え経験上学んだことを生かし移した行動がこれである。
テゾーロは『名前』の頭を優しく撫でた。
「……悪かった、許してくれ」
「っ……!?え、え……!?」
なんでこんなことになったのかわからない『名前』は戸惑いされるがままだ。
香水の香りと彼自身の香りが混じった独特の香りがふわりと鼻をつつく。
鍛えられた彼の体は固くてごついのに、どこか温かい。
その心地良さに『名前』は暫く金によって固められている訳でもないのに動けないままでいた。
そうして『名前』も小っ恥ずかしくなってついに
「あ、あの……も、もういいですから!全然怒ってないです!」
「え?」
黄金帝とは思えないような弱い声が彼から発せられる。
「っあの、離して下さい!」