第4章 勤務初日
「失礼します」
「ん、入れ」
『名前』のことを考えているとテゾーロに付き添う、言うなればマネージャのような仕事を兼任する女が部屋に入ってきた。
いつも通り、ショー終わりの今後の予定、そして報告等をしに来たのだ。
だがタダの女ではないようなしっかりしたメイクと煌めくドレスを纏った彼女は淡々と述べた。
「報告に参りました。今日は2時間後に__様のVIPルームでのスペシャルゲーム、その30分後に__様との商談がございます。明日のご予定は特にございません。」
「そうか……」
2時間後にスペシャルゲーム、何にせよ昼食を摂るのを考えるとどっちにせよ本部に戻らなくてはいけない。
……もうそろそろ『名前』も自室にいてるのではないだろうか。
「ホテルに戻る。カメカーを」
「はい、外につけていますのでいつでも」
そういうと女性は手帳に粗方書き留め閉じたあとその部屋から出て行った。
テゾーロはニンマリと笑みを浮かべながら外から流れる歓声を聞いた。
…
「……んん、この書類を2枚と。」
作業最中の『名前』は時折手を止めコーヒーを啜る。
何度もエンターキーを押したり印刷したりと、無駄に彩られた金色のコピー機からでる真っ白の紙が映えていた。
カタカタとキーボードを叩く音が響く自室に扉の音を鳴らしたのはテゾーロだった。
ピタリと一瞬止めるがスクリーンセーバーの端にやってきたテゾーロが映ったのを確認しそのまま作業を再開した。
そんな彼女にため息をつき背後で腕を組み立ち尽くす。
いつまでも話してこない彼に痺れを切らし『名前』は声を発した。
「……何か用ですか」
「!やっと喋ったか、いつまでもそうしていると老けるぞ」
来て初っ端いうことがそれかよ、と思いながら『名前』は呆れる
「余計なお世話ですよ……いいんですか?こんな所で道草食ってて」
「たった今ショーを終えたところだからな。暇つぶしだ。」
へぇ、と心底興味なさげに返事をし作業を進める。
そんな彼女が気に入らないのかテゾーロは近づき肩に手を置いた。
「!」
「折角直々に私が来てやったんだ。少しは付き合え」
そういいゆっくり自分の腕に彼の手が絡んでいく
(う〜わっ!趣味悪い誘い方だ)
「……なんだその目は」
『名前』は虫でも見るかのような目で彼を見た。