第4章 勤務初日
ふう、と一息つくともう着いていた。
テゾーロと同じ階に部屋を持つ私たちはVIPルーム同様目の前に広がる扉じゃなくて壁をノックしなければならない。
ノックの音にすぐさまタナカさんが現れた。
「するるるお待たせし……!『名前』様、そのお召し物……」
「お疲れ様ですタナカさん、どうされましたか?」
暫く見つめるタナカさんに困惑していると彼はハッとし笑顔を向けた。
「いえ、余りにもお似合いでつい見とれてしまいました。では」
「???……あ、はい」
彼に差し出された手を掴み壁の向こうへ吸い込まれる。
タナカさんの業務はハードこの上ないのだろうなあと察した。
「ありがとうございますタナカさん。」
「いえこれが私の仕事ですから」
「あ、服装のこと褒めて下さって……ありがとうございます」
「!いえ『名前』様。ドレス姿もお似合いでしたが本当にその姿……お似合いですから」
ここまで褒められると自分のファッションセンスに自信がついてしまうな。嬉しい。
「え、えへへ……そんなに褒めて下さり光栄です。お仕事頑張って下さいね」
「するるる、お気遣いありがとうございます。では」
そういい彼は床へ消えた。
「……まぁ確かにこの服装、この船の上でとなると珍しいのかも。」
こんなに動きやすいのに、女が着ないのは勿体ないのでは?
まあ効率重視よりこの船の思想では見た目だな。
『名前』は気を取り直して自室に向かい部屋に入った。
机に新聞を置き鞄をソファに置く。
作業机の方に出かけている最中に部下に言っておいた資料がどっさりと乗ってあった。
「さて……経費に売れ高、どのカジノゲームが人気か流行りは何か。調べることいっぱいだ」
無理な期限もないし何よりこんな快適な環境ならものの数時間で終えれるだろう。
頭にかけてあるサングラスを机に置いて作業机へと向かった。
…
「__成程、まあこんなものか」
一通り調べ物は終わった。この船の流行、ブランドごとの売れ行き、私用の書類はまとまった。
「……最初パソコンがこの世界にあったのは驚きだったけど、この莫大な量を考えるともっと技術は進むべきね」
こんな事務もテゾーロが殆どしていたと聞いた時は驚いたがどの時間を使っているんだろう。
意外と事務にも長けているのだろうか。
「今頃ショーかな……」