第4章 勤務初日
笑いながらダブルダウンは続けた
「確かにお得意さんはいたが、この店への貢献度は圧倒的に昨日だけでお前が勝ってるよ」
「そう、ですか」
1回で20万ベリー……確かに大盤振る舞いし過ぎた。
金銭感覚が狂ってしまってた、危ない危ないっていやもう遅いけど
「俺としては寧ろ毎日来て欲しい位だが」
「!、それって」
「……あぁ、構わねぇ」
彼の言葉にぐっと拳を握りしめる。よし成功、私の……安地が出来た。
「ありがとうダブルダウンさん、これで毎日憂鬱にならなくて済む」
「そりゃ良かった」
にへらと笑い『名前』はステーキを食べる続きをし始めた。
その姿を隅の席で変装したカリーナが見ているとも知らずに。
「ウシシッ……面白い子がきたわね」
…
そうして食べ終わり、『名前』は2杯目のウイスキーを一気に流し込んで昼食をしめた。
「いい食いっぷりだな本当に」
「いやぁだって拒否されると思ってたしそれに……こっちにきて初めてなんか、幸せだなぁって思えた」
「……?どういう意味だ」
「!」
つい喋りすぎた、と『名前』は口元をおさえた。
でも本当に幸せだと思えたのは今が初めてだ。
昨日までわけもわからず奴隷にされて、酷い仕打ちを受けてきて……この船に来てからも……
常に心を張り詰めていたからとてもしんどかったのは間違いない。
まだ現実では会社からなんとか帰った時少しとはいえ心にゆとりをもてる時間があったが、奴隷の時はそんなもの無かった。
シャワーを浴びた時、背中の焼け跡に触れてしまった時は今でも手が震えてしまう。
天翔る竜の蹄なだけあって、体はおろか、短期間でさえ心についた傷はとても深いものだった。
「どうした、顔色が悪いが……」
「!!あぁいや、ちょっとその昔のことを思い出した……だけ」
「……そうか」
だんだん沈んでいく表情の私にそれ以上ダブルダウンは言わなかった。なんて優しいんだろう。
この人達を解放できるならしてあげたい。
__でもそうしてしまうと、ルフィが来た時どうなるか私にもわからなくなってしまう。
私がこの世界に介入している時点でアレだがこれ以上あるべきものを変えてはいけない。
「あんまり思い詰めるなよ、何かあれば……ここに来て吐き出すだけでも変わるだろうから」
「ありがとう、そうする」