第4章 勤務初日
謝罪をしてくれるものの、ダブルダウンは苦虫を噛み潰したような顔のままだ。私が悪いのに。
「そんなに落ち込まないで下さい。仕方がないですよ。そんなこと思わせるために来たんじゃないんです。」
「……じゃあ、なんの用できた?」
そういうダブルダウンの暗い顔に思わず笑ってしまった。当たり前そうに『名前』は言った
「決まってるじゃないですか!お昼ご飯です、他になんの用があるんですか!あはは」
「こんな空気でよく笑えるな」
「だって、食べる気もないのに来るなんて変じゃないですか」
なおも笑いながら『名前』はメニューを見ながら指さした。
「今日はガッツリ食べたいんで1番高いこのステーキ下さい。あと、新聞も」
「……変なやつだな」
そういうとダブルダウンはテンポに新聞の指示をしたあと厨房へと消えていった。一瞬、笑っていたように見えたのは気の所為だろうか。
ウイスキーをちまちま飲んでいるとテンポが新聞を持ってきてくれていた。
「お待たせし__昨日のお姉さん!また来てくれたんですね」
「ありがとテンポ、はいこれ」
彼女から新聞を受け取りお釣りとともに軽くチップを渡した。え、という彼女に微笑む
「よかったらどうぞ」
「で、でもっ!」
「いいから」
そういい無理やり『名前』はテンポとの会話を終わらせて、受け取った新聞に顔を向けた。
横目にテンポを見ると彼女は恥ずかしそうにその場を立ち去り仕事場へと戻って行った。初めてじゃないのかな。
ここの常連になりたいから仲良くはしておきたいけれど立場上、時間がかかりそうだ。
「さてと……昨日の今日だからそんなに変わりないか」
新聞に改めて目を向けるとやはり麦わらの一味特集と言ったところ
私はもう知ってるけど紙上ではいろいろな説が繰り広げられていて、見れるはずのない世論をここまで知れるのもなかなか楽しい。
ある程度新聞を見たところで物語では見たことも無い顔が載った手配書を摘んで眺めていた。
「すまん、待たせたな」
「あ、いえいえ」
そうしているとダブルダウンが手に大きなステーキがのった皿を持ってやって来た。相当分厚い。
ごとん、と目の前に置かれた大きなステーキからもくもくと煙が立ち上る。
周りの客がそのステーキをみて羨ましそうに目線を向けた。
「流石1番高いやつ……美味しそう」