第4章 勤務初日
WilD COW は今日も変わりない。滞りなく、ステーキを運びつくり続けるいつも通りの仕事を送っている。
強いて言うなら昨日きた天竜人の奴隷が異質すぎたことくらいだろうか。あのお金は流石に驚いた。
もう今は昼だし帰っているだろうが……あんな奴もいるんだな。しばらくはもう何も無いと思うが__
「こんにちは〜ダブルダウンさん」
「?いらっしゃ……!?」
目を向けた先が予想外で、拭いていたグラスを思わず落としそうになった。とうの彼女はそんな俺を気にもとめずに目の前のカウンター席に座る。
「はぁ〜やっぱここ落ち着きますね!昨日はありがとうございました!今日は何し__」
「おお、お前?!」
「あれ?無理やりさせられている従業員とはいえ、知らされてないんですか」
「〜っなんでそんな普通に接せるんだ!……一応聞くが、昨日の……」
ダブルダウンはおそるおそる『名前』に聞いた。
『名前』は淀みない笑顔でこたえる。
「はい、昨日の奴隷です。」
「……俺は幻覚でも見てんのか、それとも怨霊……?」
『名前』は彼の戸惑いに若干の違和感を感じたが、昨日の船の爆発を思い出し納得した。
「あ〜……私、死んだことになってたんだった。へへ、忘れてました」
「そんな軽く……」
ダブルダウンも流石に『名前』に呆れる。普通忘れるかそんなこと。
「簡単にいうとですね……何やかんやあって、奴隷辞めてテゾーロのもとにいくことになったんです」
「テゾーロ……」
ダブルダウンは奴隷を辞めるという発言も訳が分からなすぎるが、それよりもテゾーロという部分に顔を歪めた。
『名前』は彼が渋そうにいうのをみて、あぁそうだ彼等にとって恨みの対象だった。と今更ながら察する。
「……すみません考えてみれば私、貴方達にとって嫌われる人でしたね。昨日優しくして貰って勘違いしちゃいました。」
「!いやそういうわけじゃない。
お前にも事情があったんだろう?テゾーロのもとで働くのと天竜人の奴隷じゃ訳が違う。ただ……な。」
許してくれ、とダブルダウンは『名前』にウイスキーを差し出した。『名前』は貰って一口飲む。
「(優しい人だな……)いいんです、同じ立場なら私も同じ反応してますよ。」
「……わるい」
『名前』はメニューのほうをちらりと見やった