第4章 勤務初日
「ですがお客様……こちらメンズ用ですが」
「サイズは合ってるので大丈夫ですよ」
「!こちらのドレスの方がお客様にはお似合いかと」
それまで適当に流していたがドレスの一言で『名前』は突然ぐるりと振り返った
「!?」
「私……ド レ ス 苦 手 な ん で す 。」
笑顔ではあるが真意が読み取れるその顔に店員は小さく返事をしたきり話さなくなってしまった。
ごめんなさい店員さん、ドレスは私にとって今地雷ワードです。
では、といい『名前』は運んで貰った服をやっとこさ試着することにした。
…
「__これで、いいかな……?」
一通り試着した結果。
ミニスカやロングスカートも試してはみたがやはり私にはパンツがしっくりきた。下着のパンツじゃない、ズボン。
女子高生ならまだしも今の私にはスカートはどうしても似合わないし、何より慣れてて動きやすい。
以前はスーツの毎日だったわけだし当然だ。
それに寒くもないし……何よりドレスはもうこりごり。
だがこの国……グラン・テゾーロではこの場にあう、ある程度豪華な身なりをしないといけない。ドレスコードとでも言うべきか。
その為本音はTシャツに短パンのラフな服がいいがそれは無理。
なので黒のパンツに適当な服を上に着たあと、その上からファー付きのジャケットを袖を通さず肩にかける。
うんこれならファーのおかげで豪華に見えるだろう。
アクセサリーをつけて誤魔化した上にこの輝かしい街並みで目を痛めない為のサングラスを頭にかけとけばいい感じ。
ドレス脱却!……と思いたい。
「__どうですか?」
私の感性とこの世界の人達の感性はまるで違う。私は庶民出身だし。
なので外で待つ店員に格好は変じゃないかどうか聞いてみることにした。
「はい、いかがでし__……えっ」
店員さんは私を見るなり硬直してしまった。
何も言わず見つめ続ける店員に『名前』も戸惑う。
……やはりダメなのだろうか。
「あ、やっぱ変ですかね……あはは」
「か……」
小刻みに震えながら店員さんはボソリと言う
『名前』は訳が分からず聞き返した
「か?」
「かっ……カッコイイです……」
店員さんは『名前』の姿に見とれてしまっていた。
なんてカッコイイんだろう、と。
「?……ええっと〜、大丈夫?」