第4章 勤務初日
なんでもカードを手にとり光に照らした。
金色のカードが私を照らす。
「……なんでテゾーロは私をこんなに優遇するんだろう。」
ふと、いや何度もさっきから思っていた。
テゾーロは悲しい過去から大きく歪んでしまった極悪非道な人だと用心していたのに。優遇し過ぎにも程があるだろ。
まあともかく……奴隷の時はそもそも関わることがアウトだから殆どしなかったけれど、正社員になったから皆に挨拶回りにもいかなくちゃ。
名刺無いけど許されるよね、ワンピースの世界で律儀に名刺交換してる方が変かも
そして詳しい仕事内容はテゾーロが言うには、能力はおろか力さえも無い私は裏方役で、主に事務。得意分野でありがたい。
……あれ?私絶対幹部じゃなくていいのでは?
「……ん?」
カードを見ていると視界の端に異様なものが見えたことに気づく。ぼんやりとした何かに焦点を合わせると、
壁の隅にいたのが電伝虫だったことに気づいた。
……ってこれ、監視カメラ型?!
「は?!」
驚いて声が出てしまった。いや待ってよ監視カメラ機能のやつだアレ!インペルダウンのとそっくり!
そんな私を気にもとめずに電伝虫はただ私を見つめ続けた。
テゾーロもしかして、私にあげる部屋だとかこつけて元はこの部屋に女呼んでたんじゃ……!
それなら納得も行く。奴隷だった+不運の私がこんなに部屋得れるなんていい話にも程がある。
ともかく、私の部屋に監視カメラ仕掛けようなんざ……
「……絶対許さねぇぞあの野郎」
じ、と電伝虫を『名前』は見つめた。
彼女の瞳が輝いたように電伝虫の目に映った直後、電伝虫は気が失ったかのようにぼとりと落ちてそのまま機能を停止した。
「!?」
動かない電伝虫。
死んだかと思ったが暫くすると倒れた電伝虫は起き上がり、のそのそと部屋を徘徊し始めた。
「……電伝虫って謎が多いわ。ま、今のうちに逃がしちゃお」
『名前』はそっと電伝虫を拾い、部屋の外に出した。
もう二度と入ってくるなというおまじないをかけた上で。
「……さてと、お風呂はいんなきゃ!」
『名前』は扉を閉めて用意されていたネグリジェを取りに行き風呂へ向かった。
……監視カメラがもう無いか確認しながら。