第4章 勤務初日
はてさて、テゾーロとトンデモ契約を交わし現時点で1時間経ったといったところだろうか。
まさか奴隷という名の最底辺からグラン・テゾーロの社員及び幹部。上から2番目の地位になるとは思いもしなかった。
……私が数ヶ月必死こいて天竜人に仕えた意味はなんだったの
と、どうしようもないことを考えていた
__テゾーロから早速貰った、豪華な自室で
「……っておかしいでしょうが!」
当たり前のように置かれたキングサイズのベットから飛び起きた『名前』。
眩く輝く大理石のテーブルに、現実で使ってたソファとは比べ物にならないほどの高級ソファ。
ご飯は部屋に置かれた専用の電伝虫を使えば一瞬で運ばれてくる。それも一流のシェフが作る料理。
勿論この電伝虫には他にも用途はある。現実のホテルで言うルームサービスとか受付とか……
この部屋はテゾーロと同じ階の部屋だからか置かれた家具も似たような配置。一つ一つのランクはテゾーロの方がそら上だけど。
庶民から見ればどっちも同じようなもの。強いていえば
「テゾーロの部屋は窓の大きさがこの部屋の3倍はあったような……」
相変わらず窓は大きい。テゾーロがいうにはマジックミラーらしいけれど、流石に小っ恥ずかしい。
「うう……夜景は目がチカチカする〜!常時カーテンだなこれ」
はあとため息をつき、『名前』はカーテンのリモコンを押して夜空を閉じた。
こんな機能、現実じゃ一生お目にかかれない気がする。
幹部になり当たり前のように家がない私はテゾーロからこの部屋を貰ったけれど……
家賃は勿論無し!電気代無し!水道代無し!家具も支給!……は申し訳なさが流石に勝ってしまう。
ドレスまで渡されそうになった時は流石に断った。
てかこの国に合わないとしても散々奴隷時代にも着させられたんだ、ドレスばっかきたくないっつの!
「明日は服屋に直行だな、生活用品は揃えたいし……下のやつパシれって言うけど、テゾーロは散々な奴隷時代過ごしたんじゃないの?」
嫌、自分でやるから金渡せ(意訳)して、現金とカードは手に入れた。
このカードはグラン・テゾーロの関係者、つまり私たちの中でも上の位に立つ人が持てる。
いわば、『これ見せたらなんでも買えるぞカード』
正式名称はあったけど覚えにくいから却下、私はこれを『なんでもカード』と呼ぶことにする。