第3章 特別なショー
テゾーロも窓の方へ向かい景色を眺めに行った。
窓から見える金色の世界をテゾーロは見続けている。
その姿を見て何となく『名前』も窓の近くへ行き外を見た。
絶え間ない外の騒がしさを眺めているとテゾーロが口を開いた。
「……何故だ」
「……?」
「何故、お前はあんなに強い」
「?どこがですか」
テゾーロの方を向き聞いてみるが依然彼は窓の景色を見たままだ。
そのまま彼は話し始める。
「普通天竜人に対して恐れおののくはずだ。
なのに公然で罵られても、踏まれても、血を流しても……眉一つ動かさない。」
「……(パワハラはブラック企業では普通だしなぁ……)」
「何故そんなに耐えれる?」
「そうですね……」
鼻血が止まり借りたハンカチについた真っ赤な汚れをみながら『名前』は答えた。
「……天竜人の奴隷ってそういう扱いがこの世界では普通だから、私の中で割り切れているから、でしょうか……」
「?」
「あなたなら聞かなくてもわかってるんじゃないですか。
反抗するだけこの世界じゃ無駄だと。」
「!……お前……」
テゾーロはビクリと体を震わせ、『名前』の方を見た。
__瞳が馬鹿みたいに輝いてる。
「……それは、どういう意味だ」
「言葉の通りです。」
そう言って鼻血を拭って不敵に笑った彼女に心を奪われたような感覚を覚えた。
__なんて美しく凛としているのだろう。
『名前』の方を向いて固まるテゾーロから『名前』はまた遠く景色に目を向けた
「……ま、とりあえず私はそろそろ船に戻ります」
「!?」
テゾーロは意外だったのか体まで『名前』に向く
「ホテル、天竜人と同じ部屋なんです。けど今日は入らせても貰えないでしょうし、入れた所で今夜は寝かせてもらえないと思います。だから船まで戻って牢屋で過ごそうかと。」
「……だが」
「ようするに、今夜だけ天竜人から逃げちゃおうかなって」
えへ、と照れくさそうに笑う『名前』。
「まぁさっきはお騒がせしました。……ハンカチ、洗って返しますね」
そう言って『名前』は軽くお辞儀をして扉の方へと向かった。
「……」
『名前』の遠ざかっていく後ろ姿、彼女をみてテゾーロは何故か……消えかかっていくように見えてしまって
彼女の手を掴んでいた。