第3章 特別なショー
それからはテゾーロはその場の空気とは場違いな程とても明るい表情、そして声を天竜人達に向けた。
「__いやぁ大変お待たせしました……ただいまディナーの準備が出来ましたのでご案内を」
「……ディナー?」
「ええそうです、グラン・テゾーロが誇る一流の、その上をゆくシェフが天竜人や貴族の皆様方の為に特別なディナーを用意しました。」
「……そうかえ。……ふん、丁度こいつで疲れたところだえ」
「それはそれは……何よりで」
そうして、天竜人や貴族達はテゾーロの横をまるで今何も起きていなかったかのように通り過ぎ、
気づけばVIPルームには彼らはいなくなっていた。
それを確認したテゾーロはそれまでしていた笑顔をすぐさま解いた。
後ろを向くともう『名前』は起き上がっていた。
ヨロヨロとした足取りで立ち上がり血を零す彼女にいてもたってもいられず、テゾーロはハンカチを渡した。
「!……え?」
「使え。……床をこれ以上汚されては困る」
「……」
何も言わずに『名前』はハンカチを受け取り鼻を押さえた。
だいぶ強く床に打ちつけられたのか、血はそれでもポタポタと滴っている。
「……すみ、ません」
「!」
こんな状況で、あんなことをされた上で、謝る『名前』に驚き目を見張る
そしてテゾーロは舌打ちをした
「……謝罪などされたところで無駄だ。」
さっき二人きりの時にあんなに強気だった彼女がこうなるとは。
気が狂うな、と思いつつテゾーロはエレベーターの方へと向かい振り返った
「……なにを立ち止まっている」
「?」
「……ついてこい」
『名前』は暫くテゾーロを見つめたあと、素直に頷きテゾーロの後ろを歩いた。
…
テゾーロについて行った結果着いた場所は、単なる部屋だった。
入って見える大きめのソファ、豪華そうな机に、大きな宝石。
今までみた部屋の中で1番生活感がある。
鼻を押さえたまま『名前』は辺りをキョロキョロと見渡した。
「……ここは私の部屋だ」
「!!……君の」
だだっ広い部屋。なのに生活感があるのはテゾーロの部屋だったからか。
納得しテゾーロがいるほうを見ると大きな窓がはられていた。
1番いい部屋なのだろう。ここから見える景色は絶景だ。