第3章 特別なショー
「ですが仕方がありません、天竜人に逆らえばテゾーロ様の地位が危うく……!ここは時間が経ち収まるまで待ち、こらえるしか……!」
「わかってる……だが……」
そうだとテゾーロはわかりつつも目の前で起こっていることに腹立たしく思ってしまう
いつもなら黙って終わるまで待っていられるのだが、『名前』が恥をかかされているのを見ると、自身の何かを傷つけられたような感覚に陥った。
……それに昔の嫌な思い出が甦ってしまうのもある。
目を背ければいいのだが、そうしてはいけない気もしてただテゾーロは見ていた。
だが今回はどうやら怒りが収まらないのか、チャルロスの怒りは収まるどころかエスカレートしていく
「お前!……ちゃんと頭を地に擦り付けるだえ!」
「……申し訳ございません」
『名前』は躊躇うことなく頭を地につけた
だがチャルロスはその頭を上から踏みつけた。
「っう゛?!」
『名前』も驚いて反射的に声が出た
思わずテゾーロは目を見張る
「……っ!」
「ふぇふぇふぇ……そうだえ、もっと擦り付けるだえ」
「……っん゛、ぐ……!」
チャルロスは踏みつける足をグリグリとゆらし更に力をいれた。貴族の方からついには笑い声が聞こえる。
「……!おい……」
「ダメですテゾーロ様!お気持ちはわかりますが堪えて……!」
「わかっている……だが」
テゾーロの怒りも収まらない。
今すぐにでもあの天竜人を殴り飛ばしてやりたい気持ちを抑えられずにいる。
そうしてついにチャルロスは彼女の頭にかかと落としをくらわした。
ごん、と鈍い音が部屋に響き呻き声が『名前』から漏れた。
「!な……」
「ふぇっふえっふぇ……!グズ奴隷はここまでやってやっと許されるだえ」
「……っも、しわけ……ケホ……ざいませ……」
『名前』の鼻から血がでて、フロアに赤い染みをつけた。
『名前』はそれでもなお、血が零れる鼻を片手で押さえながら謝り続けていた
そんな彼女を見てテゾーロの何かがブチリと切れた音がした。
それまでエレベーター前で見ていたテゾーロが歩きだし、タナカさんがテゾーロ様!と止めようとした手は宙を掴んだ。
スタスタと歩き、『名前』の前にテゾーロは立ちはだかった。
「?」
「!なんだえ」
テゾーロは一瞬だけ殺気立った表情をチャルロスに向けた