第2章 グラン・テゾーロ
「今の暮らしは……ただひたすら天竜人の奴隷として、彼らに悦ばれるが為に行動して保たれてます。
__例えそれが私を殺すようなことでも。」
「!」
『名前』はテゾーロから目を背けて話し続ける
「一方、あなたの下につけばそんなことをしなくてもこの服も、お金も地位も……得れる」
「そうだ、だから私の所に__」
『名前』はテゾーロの話を遮るように、正面を向き彼の目を真っ直ぐ見据えて言い放った
「でも残念ですね。あなたの元にはいけないです。」
「?!」
流石に驚きと言ったところか、テゾーロは片眉をひく、と上にあげた。
「あなたの元に仕えればって実はここに着くまで思ってました。」
「?なら何故……」
「私がこの船に乗る前に言われたんですよ。
……私が来てからは他の奴隷は痛めつけられていないと」
「!」
『名前』は今朝、私を仕立てた使用人の奴隷に言われたことを思い出した。
心の片隅ではテゾーロの支配下になって潜み、ルフィ達を助太刀すればと思っていたけれど、それを言われてその気がふっと失せてきてしまった。
__だって、私がいなくたってルフィ達はテゾーロに勝てる。
私は必要じゃない。彼らにとって必要なのはカリーナだ。
だけど今、天竜人の他の奴隷は申し訳ないとは思いつつも……私の存在を必要としている。
__やっと気づけた。
私がこの世界で命を賭すべき場所は、
私がいなければ傷つき、最悪死んでいたかもしれない彼らへだ。
だから私はテゾーロの仲間にはなれない。
『名前』は自分がなんのためにこの世界に呼ばれたのかを確信し決意を固めた。
「……私がいなくなったら、天竜人はいいオモチャが無くなったと言って八つ当たりに他の奴隷を痛めつける
それを考えたら……私はあなたのもとにはいけない。」
少し悲しげな、何処か諦めたような顔で『名前』はテゾーロにそう言った
そういう彼女にテゾーロは
「……んだ、そ……顔……」
何処か見覚えのある、胸の締め付けられるような『名前』の顔をみて、何かを呟いた
「え?」
「!いや、ハハハ……」
「……?」
彼は何かを気づかれたくなくてきっと笑った……けど、目はこちらに向いてない。
……だけど何かを見てる。