第2章 グラン・テゾーロ
そしてVIPルームの賭け。
あれは勝たせる気は全くない、そう見せかけた罠だ。
あの場でバカラの能力を知った奴は全員ショーの見世物としてその命を金に変えた。
……もしくは知らせずに借金をふっかけ自滅させた。
天竜人の輩に対しては接待として、程よく丁半をするのみ。
バカラの能力は使わない。
だから『名前』……こいつがバカラの能力を知っている時点で嘘をついていることは明白なのだ。
本来ならここで殺した。……だが、
「……?なんですかさっきからジロジロと」
__こいつの瞳は何故こんなにも人を捉えて離さないのだろう
悪寒というか、見透かされたような
……宝石よりも美しい
こいつの話に信じられない部分はいくつもあるが、
天竜人の奴隷から今の地位にまで上り詰めたこと。
そして、3000万ベリーを3億ベリーに変えるほどの運の強さは素直に認める。
__こいつはつかえる!
「あの、さっきから何考えてるかは知りませんけどもう用がないなら離してくれません?」
テゾーロの変わりまくる表情に痺れを切らした『名前』は目を細め訴えかけた
「!失礼……少し考え事をしていた。『名前』、君に取引を持ちかけようと思ってな」
「へぇ、一体何をお企み?」
ニンマリと口に弧を描き、色気をもった表情で『名前』を見下ろした。
「__簡単だ。俺の所に来ないか?『名前』」
「……っ!?」
流石の『名前』も驚いたのかやっと余裕そうに笑みを浮かべた表情が崩れ、目を見開いた
「勿論、お前の度量を見越して存分に優遇してやろう。
金も、手下も……相当の権力も」
「……っへぇ、身元不明の私をそんなに信用するんですか?」
「確かにお前は訳が分からない部分が大量にある。だがそれ以上にお前は価値があると俺は思うがな」
「……」
今まで俺は、地位も仲間も……いや何もかも!金で従えた。
この世は結局は金だ。ついてこないはずがない!
そう確信を持つテゾーロに対し『名前』は答えも出さずただ黙っていた
「……どうした、何を迷う?__まさか今の生き方はお前にとって幸せだとでもいえるのか?そんな筈ないだろう?」
彼の煽りに『名前』は鼻で笑って返した
「何がおかしい」
「……ま、確かに私は今の暮らしはクソほど嫌ですよ。反吐が出る。」