第2章 グラン・テゾーロ
『名前』の怒鳴り声に彼は音を立て椅子から落ちそうになった
さすがに私も彼の様子に我に返り、自分のキレ具合に驚く
「……本当にタダの奴隷だと?」
「……そうです」
「天竜人と裏社会を繋げているパイプ的な__」
「だから違う……っそうだとしたら首輪もつけられないでしょう!?」
テゾーロは開いた口が塞がらないまま、彼女の首元に目を向ける
真面目に彼女の首元に巻かれたものが首輪だとやっと気づいたのたた。
自身があれほど警戒していたのが奴隷だと納得し、力が抜けずるりと椅子からずり落ちかける
「……はぁ」
オマケにため息まで吐いた
まさか、だから場所を変えて拘束するほど警戒していたとは。
さっきまで恐れていたはずのテゾーロに流石に同情すると同時に、頭が冷えた。
「すみません私も取り乱しました。ともかく、私に記憶がない以上、私の経歴が一切ないことを解決しようがないんです」
「……もういい」
テゾーロは椅子に座りなおし態勢を直したものの、先程までの気迫は一切と言っていいほど消えていた。
「あー……まあいい、次だ。何故丁半の時あんなことをした」
「それは」
確かにそれについてはまだ解決されていない。
私は現世でワンピースを見たからとはいえ、彼目線でなると、一般人ましてや奴隷がバカラの能力を知ってることは大問題だ。
「ここに着く前、ご主人の船内で貴族たちの会話から聞こえたので警戒しました」
「……そうか」
…
……テゾーロは目を伏せ暫く考えた後、また『名前』に目を向けた
「……(やはり、こいつは何か隠してる)」
「?どうかされました」
「いや……」
常人ならこの状況もっと怯えてもいいはずだ。
体を金で拘束されて逃げることもままならないことも。体の一部を金に変えられたことも。
__なのにこの女はひとつも動揺しない。
そしてもう一つ、バカラの能力をこいつが知っていること
さっき俺は丁半での行動に触れたが、誰もバカラの能力について事細かに聞いてない。
貴族といったが……バカラの能力は関係者しか知らない。
それも1部の……幹部のみだ。