第12章 新たな刺客
スモーカーが思ったより落ち着いて聞いているのに逆に恐れを感じつつ、ヘルメッポはおそるおそる口を開いた。
「そ、それが……3000万ベリー、でして……」
「ハッ、それァしばらく贅た────3000万だと!?!?」
「ヒィッ!?」
予想外の金額にスモーカーはヘルメッポの首元を掴みかかるような勢いで引き寄せた。鬼の形相にさすがに悲鳴をあげる。その様子に否応なしに注目を集め、その気迫に引いて近くにいた者はそそくさと逃げるように離れた。
思わず落ち着きを失ってしまったのに気づいたスモーカーはハッとしてヘルメッポを解放する。間近で受けた彼は泣きながらへなへなと崩れるように地へ膝を落とした。しかし落ち着いてもいられない。
賭博に負けたことはいい、スモーカーがここに来るまでに何度かともに船に乗っていた部下から博打に負けたと泣きつかれていたからだ。しかし今回は額が額、それまでに阿鼻叫喚になっていた、浮ついた部下らは10〜20、多くて30万ベリーほどのしばらくは贅沢のできない現実的に痛いほどのもの。
まさか馬鹿正直に3000万ベリーも負けてくるやつがいるとは思わなかったのだ。役職なしではなく、腐っても軍曹の彼がそんなことをしでかすとは。
たしぎと同様に船の貯蔵庫や刀を換金しても無駄だということ、よりによってグラン・テゾーロでやらかしてしまったこと、その後の責任を問われること……次々と浮かぶそれらの課題に頭を抱えた。
「やりやがったなテメェ……!」
「うわ〜!すみません、おれ、おれ〜!!!」
「スモーカーさん、彼は当然としてこのままじゃ私たち……!」
彼の咥える葉巻が頻繁に吸われ、ものすごい速さで火が進み灰となって落ちていく。
「あァ……責任者のおれの監督責任でもある。そうなりゃ降格、ヘタすりゃ追放……。」
「追放!?そんな、スモーカーさんまで!?私、時雨を売ってきます!!!」
「ぼ、僕も!僕も換金してきます!」
「ンな端金作っても意味ねェだろうが……諦めろ、せいぜい歩兵になれりゃ運がいいくらいに思っておいたほうがいい。」
そんな!とたしぎやコビーが慌ててどうにか出来ないかと四苦八苦し、元凶のヘルメッポはもはや生気すら消えかかっていた。スモーカーに至っては海軍を敵にまわしたうえでの余生をどうしようか考えている。