第12章 新たな刺客
「3000万ベリーなんて大金、積荷をどうにかしても今すぐ用意できない……しかもよりによってグラン・テゾーロで……!」
通常のカジノならまだなんとか出来たかもしれないがこの場はグラン・テゾーロ、そうもいかない場所。ひとたび借金を作り払えないとなれば報復は恐ろしいものになるだろう。どうにかできないか?いや船にそんな大金も換金できるような代物もない。刀や銃を収めたって到底3000万ベリーには届かないだろう。いや、そもそもこんな大金、とても彼だけの責任では済まされない。となれば──
「隊全体の責任になったら……そうするわけには、でも……。」
彼女がぶつぶつと言いながら青ざめるのを見てヘルメッポは助からないのだと察してまたも大きく咽び泣く。コビーもより重く責任を感じてたしぎ以上に青ざめて慌て始めた。
「うわあ〜〜〜このままじゃおれ、クビになっちまう〜〜〜!!!」
「そんなあ〜!?いやです、ヘルメッポさん僕が必ずどうにか、どうにか!」
「どうしたら……どうしたら……」
そんな酷い表情の3人を通りすがりの周りが哀れみ、嘲笑して去っていく中、今度は葉巻の煙を混じえながらため息をこぼしつつ彼らに近づく男が1人。
「……お前ら何をぎゃあぎゃあ騒いでやがる。」
「どうし……────スモーカーさん!?」
「「"スモーカー准将"〜〜〜〜〜!!!」」
常人のサイズを逸した葉巻を咥えて、それから立ち上る白煙をまとい現れたのは海軍准将のスモーカー。彼もまたヘルメッポ、コビー、たしぎとともにこのグラン・テゾーロに潜入し観察しに訪れた1人だった。とくに誰かを標的にしているのではなく、海軍として狙うべき標的がどれくらいこの場に訪れているのか、客層の把握をしに来たといったところだろうか。はぁ、と明らかに大丈夫そうではない彼らに面倒ごとを察する。
「お前ら今日は観察だと言っただろう、博打に負けた奴らと同じ顔してどうするんだ。」
「それが……スモーカーさん……」
「あ?」
「お、おれ……本当に負けちまいまして……」
ああなんだ本当にそうだったのか、と少し安堵する。どこかの海賊やグラン・テゾーロに常駐する厄介なマフィアと騒動があったんじゃないかと危惧していたからだ。賭博に負けたぐらいなら当人の責務で自身や隊には関係ない。
「あァそういうことか……そりゃ残念だったな。」