第12章 新たな刺客
「『名前』のことだ、自力で解決しようとしたのだろう。何回言えばわかるんだアイツは。」
はあ、とため息をつきながら彼はタナカさんの持つ電伝虫を睨んだ。『名前』が以前から何でも背負いたがるのは知っていたが、普段の仕事はまだしも今回は命に関わる。最近は頼るようになったと思っていたがどうやらまだ理解していないらしい。
「信頼はされているようですがまだまだ時間がかかるでしょうね。しかしテゾーロ様、それよりも──」
「──ああ。」
タナカさんが言い終える前に先に答えるテゾーロ。ちらりとあの屍に目を移す。彼は言いにくそうに眉間に皺を寄せながら口を開けた。
「"蹄"──これが一体何を意味するか。憶測にすぎんが奴らは『名前』が天竜人の奴隷だったと知っている可能性が高い。」
奴隷、その言葉に途端に重苦しい空気に落ちる。それはテゾーロが元そう言う立場だったからなのか、それとも奴隷そのものにある強い嫌な印象によるものかはわからない。ただ誰も笑おうとはしなかった。
「情報が漏れるようなことはないはずですが、申し訳ありません。」
タナカさんが謝罪するのを見て辞めろ、とテゾーロは手で払うように彼の謝罪を拒否した。ですが、とタナカさんもおそるおそる、少しだけ顔を上げつつ彼を見やる。
「やめろ、お前がそんなミスをしないことは知っている。今回の襲撃自体なぜ『名前』単体ではなく、本部を狙ったのかも不明だ。わざわざ敵を増やす理由がわからん。」
「……。」
グラン・テゾーロは自他ともに認める大きな力を、多くを支配できるほどの強さを持っている。だからこそ戦闘に対しては実力の無い『名前』を狙うにあたって単体の彼女を標的にするのではなく、我々を襲撃し、わざわざ敵を増やすようなおこないに理解出来なかった。口では確かに『名前』を探していたことや事実彼女に接触したものの、結局彼女をみすみす逃したこと。そしてこちらに攻撃をしたものの得るものが何もない彼らに困惑しかない。何か裏があるはずだ。
「……あるいは、『名前』様に恨みを持つ者がいるのでしょうか。」
タナカさんの言葉にテゾーロとバカラが反応する。バカラは いや、とそれを即座に反論した。
「恨み?あの子が?──とてもあんな、自身を犠牲にまでするお人好しよ?」