第12章 新たな刺客
事実私は銃口を向けられてサボに庇われたとはいえど、もとより私を殺すつもりはない、と向こうの言い分に加えて今回の襲撃。もし私を狙い、始末するつもりだったのならばこんな回りくどいことしなくて良かっただろう。今思えばあの時、男が私に向けて撃ったのはサボの動揺を狙ったもののように思う。
これらはこの場では私しか知りえないことだから更に疑いを深められるだろうが下手に嘘をつくよりは巻き返しがつくと思った。
ともかく、彼らには既に何度も気にかけてもらっている以上現世の者どもが起こしたことは同じ現世の私が解決したい。そのためには彼らの心配はありがたいが動きにくくなってしまう。直接テゾーロらにきたもの以外は私と『青年』でどうにかしたい。
「───まぁ、つまり私は無事だったんです。心配してくださってありがとうございました。」
「……。」
タナカさんがこちらに向けるその瞳は驚愕かそれとも疑いか、何かはわからないが納得しきっていないように思う。だが彼は黙ったままそれ以上追求することはなかった。……数秒ほど、場が静まり返ったのを受けて、私に異論はないのだろうと『名前』は少し安心して胸を撫で下ろす。周囲の、復旧作業中の彼らを見るにもう手は足りている。私に出来ることは無いだろうと察した『名前』は被害のない自室に戻り、いつもの事務作業を進めることにした。
そのため『名前』がタナカさんに声をかけようとした時、ずっと私たちの会話を静観していたバカラが彼女を呼び止めた。
「ねえ、『名前』」
「はい」
「貴方さっき───」
「……よせ、バカラ」
バカラが『名前』に何か言おうとする途中でテゾーロが不自然にそれを遮った。え、と『名前』がテゾーロに目を向ける。同じくバカラもびくりと身体を震わせて驚いている様子だった。
「テ、テゾーロ様ですが……」
「いや、いい。その話は私が直接聞く」
彼女はなら、と大人しく引き下がった。だが今の呼び掛けは完全に私個人に対してだったはず。当然のようにテゾーロが請け負うのは変な話だ。
「いえ話があるのでしたら今でも、それにバカラさんは私に用があるんじゃ──」
「いや今はこの場の復旧が先だ。この騒動だ、お前も休憩を十分に取れていないだろう?お前に任せた期限の近い業務はどうなった?今日はもう休め」