第12章 新たな刺客
若干言っている意味が何かわからず表情を曇らすタナカさん。意を決して『名前』は賭けに出ることにした。
「───多分、ですけれどお会いしました。今回襲撃してきた人たちの一部、に。」
「「「!?」」」
『名前』の言葉に問いかけたタナカさん、聞いていたテゾーロ、バカラを含む周囲皆が驚いた。もしそれが本当ならば『名前』のみ襲撃された、この現場から遠ざけ危険に触れさせないようにした意味がない。いや、もちろんこの国全体に蔓延っている可能性なんてあるに決まっているのだが。
しかし常日頃、暴動が起きる度にそれを鎮静化させてきた部下らが苦戦した相手に対して一般人で何の能力も持たない彼女が逃げ切るなど無理に思えたのである。
「するる……ええと、『名前』様つまり逃げきれた、と言うことですか?似たような、下町にいるあの人たちではなく?」
「ええ、あそこにいる人が犯人の1人なら同じかと。」
「!」
『名前』が指さしたのは前にいるタナカさん、テゾーロらの奥の壁にもたれている真っ暗なフードを深く被った、屍だった。別に今更と言えばそうだが、何となく彼女に死体をあまり見せたくなかったのか部下らがそれを囲うように身で隠す。
「では本当に『名前』様、身を隠しきったと?」
「とてもお前1人では出来るとは思えないが、協力者でもいたのか?」
「はい、これでも交友関係はありますので。」
「……そうか。」
にわかに信じ難いのはテゾーロも同じ、『名前』に詳しく聞くため問いを投げかける。さらりと答える彼女を見てそれ以上追求するのは辞めた。疑わしくともどこかで豪運な彼女なら成し得るだろうと思える自分もいたのだ。
しかしタナカさんは謎を謎のままするのは気が収まらないのか、変わらず彼女に少しずつ追求していく。
「そうでしたか、するるる……無事で何より。一度『名前』様の電伝虫から怒声が聞こえたので心配しました。」
「!?」
『名前』はタナカさんの言葉に驚きのあまり え、と声が出かけたのをなんとか抑えた。彼女の中でいつの間にか弾け飛んでいた電伝虫から音が届けられていたとは思わなかったからだ。
そしてその事実を聞いて彼の横にいたテゾーロも、少し後ろで話を静観していたバカラも同様に驚き、目を見開いた。