第12章 新たな刺客
もちろん、危険な輩が徘徊していると先に情報があれば避けているし、そういった勢力が落ち着き、穏やかな日だろうと判断した上でダウンタウン付近を訪れるように予防はしている。しかし何かが起きてしまった時迷惑をかけてしまうからいい顔をされないのも当然だ。
緊急事態で突然起きたことだから、運悪くたまたまダウンタウンにいたと言い訳できるとはいえ、口を滑らせてサボといた時のことを裏付けてしまわないようにしなければ。『名前』は緊張しつつ、小さく息を吐いて微笑みながら答えた。
「はい、連絡が来るまでは風にあたろうと思って船の端に向かっていたんです。」
「なるほど、それなら当然ですね。」
「……何のことでしょう?」
「いえ、『名前』様を避難させるよう指示したあとご連絡が無かったのでこちらでも探していていたんです。ですが今、急にこの場に現れたので驚きました。」
「!(そうか、だから……)」
「……。」
タナカさんの話を聞いて私が現れて皆が驚いた理由に気づき目を見張った。その様子を、そして次に出る言葉をタナカさんは微笑みながら待つ。テゾーロも同様に私の言葉を黙って待っているようだった。
私は皆が私のことを気にかけてくれていたこと、そして入って早々に驚かれた理由を納得できた。危険な状態にあるなら繁華街にでてくるのが普通、いっこうに見つからず今になって急に現れてはそうなるのも無理は無い。
少しでも違和感あることを言えばここまで積み上げてきた信頼を崩してしまう。それは私の命の危機を、『青年』との約束を守れないことにあたる。もちろんこの船上でなくともルフィらの行く末を遠くから見届けることは出来るし、『青年』もきっと手を貸してくれるだろう。
けれど私はいつしか、この船の上で麦わらの一味の力になりたいという願いを叶えたいと思うようになっていた。『名前』はキュッと心臓が締まるような、そんな気がしながら言葉をきちんと脳内で吟味して口に出す。
「はい、一度状況を把握するために店にいたので多分入れ違いになったんだと思います。」
「カメラに映らなかったということはダウンタウン付近、でしょうか。」
「はい、気になってた店があったのでそこで。ただ結構繁華街から離れていたのもあって隠れ隠れで向かっていたから……。」
「……というと?」