第12章 新たな刺客
「…………えっと、あれ?」
「……。」
一方『名前』は私が声を出したことでか、途端に静かになった周囲に驚いていた。だがまあ入口が閉まっていたから中が見えず不安になっていたのだが今見る限りは大丈夫そうで安心した。
多分復旧作業に務めているのだろうが、いつまでも、その手を止めてこちらを見て固まる皆にただ戸惑う。『名前』は、ああ……えっと……、と焦りが全面に出ながらもぎこちなく、へにゃりと笑ってみせた。
「えっと……あっそっか!──ごめん、実はいろいろあって電伝虫が野生化しちゃって。連絡取ろうと思ったんだけれど皆になかなか会えなくって。」
「……。」
「あっいや、そうだよね皆ここで戦ってくれていたんだから、外で出会えるはずないよね!?無神経だった!……あの……?」
依然無言でこちらに視線を向ける周囲にだんだん不安になってきた『名前』は次第にもしかして自分が今喋っていること自体間違いじゃないのか、怒っているんじゃないかと口をつぐんだ。いや、私が悪いんだ。と思いどうしたら良いのかわからず眉がだんだん八の字になる。
「……ごめん……なさい。」
「……。」
皆に心配かけすぎた、こちらにも事情があったとはいえこの国にとって一般実であるお荷物の私が自由気ままにやり過ぎたんだ。そう思い しゅん、と『名前』が少し俯いた数秒後。
「「「……───よかった〜〜〜!!!」」」
「……えっ?」
突然部下の皆々が大きく声を上げ、『名前』の無事を大いに喜ぶ。張り詰めていた糸が切れたように次々とあがる歓声、感動の声、涙……。まるでショーの終わりのような状況に『名前』は思わず俯いていた顔を上げた。
「……???、えっと────うわあ!?」
「ああ、良かった!怪我は?無事なのね!?本当に『名前』!?」
「バ、バカラさん!?」
「すごく心配したのよ!私の妹が、どうなったのって私……!」
「え、えっと……???」
バカラの反応にいまいち状況が飲み込めないまま『名前』は首を傾げた。怪我はないか無事かだなんて、この場を襲われて抵抗した皆に投げかけられるべきだろう、こちらのセリフだ。部下が必死の思いで安全な所へ逃げろ、絶対に来るなとは言っていたが。
「(そういえばあの時の彼、私が足でまといになるとはいえ、凄い焦っていたような……)」