第12章 新たな刺客
確かに避難をと言われたのだから無事終わったなら連絡の一つはあるだろう。もしかしたらさっきまでの間にかけてくれていたかもしれない、一度こちらから連絡しなければ……と思ったのだが。
「あれ?」
「どうした?」
「えっ、いやここにいれてたと思うんだけれど……うーん。」
「……探してる電伝虫ってアレか?」
「──え?」
ゴソゴソと何度も上着のポケットやらなんやらを探しながら『名前』はサボの指さす方へ目を向けた。するとそこには
のろのろと道端をはう、私の電伝虫がいた。
「なんで!?いつの間に!?」
驚いて駆け寄るとこちらに見向きもしない電伝虫。様子がおかしいと殻を見ると割れている。電伝虫はものともせずにのそのそと動いてるが……。彼女に続いてサボも見に来ると ああ、と彼はこぼした。
「野生化してるな。」
「やっぱり?」
「殻が損傷してもう従う必要が無くなったんだ。」
「知らない間に飛び出しちゃったのかな……あ〜テゾーロにまたなんか言われる!」
「ハ、ハハハ……。」
頭を抱える『名前』をお気の毒だとサボは苦笑した。まあ命があるだけ幾分もマシだと思うほかない。
「REOROに戻る道で誰かに状況聞いてみるか……今日はいろいろありがとう。」
「気にするな!これくらいなんてことない、無事で良かった。ないと思うが、もう戻るんだろう?表まで同行するよ。」
「うん、お願い。」
……
そうして一度落ち着いた2人は路地裏を抜け、表の繁華街まで共にした。別れる直前にサボは『名前』に何かあった時のためにと彼の電伝虫の識別番号、そして一応、と彼のビブルカードの切れ端を貰った。彼がまた路地裏に戻り見えなくなるまで見送ったあと、『名前』はTHE REOROを目指した。
途中適当なホテルで現場はどうなっているか聞こうとしたが騒動のせいかどこもいつもより早くに閉まっていて聞くに聞けない。よく考えてみればあんなに混乱している皆を見るのは初めてだし、こうなるのも当たり前だろう。それでも繁華街を行く人々は騒動なんて知らなそうに皆楽しそうで、この国のセキュリティ体制は常軌を逸していると思うばかりだった。
部下からの連絡からだいぶ時間が経っていること、そしてこの場の賑やかさを見てもう安全だろうと判断した『名前』はゆっくりと確かめるように歩を進めることにした。