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【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第12章 新たな刺客


「げほっ、はあっ……はあっ。」
「『名前』!?」

途端フラッシュバックするあの忌々しい日々。焼印を入れられてからというものの慰みものとされていた、人としての扱いを受けなかった、いつ終わるかも見えなくて心を閉ざしかけていたあの絶望が帰ってきてしまった。それは容易に今の私を苦しめる。

そしてふらりと地に倒れそうになったのをサボは彼女の肩を持ち支えた。声をかけるが呼吸は荒いまま。そんな『名前』にまくし立てるように男は続ける。

「可哀想に。飛ばされた世界であんな目にあって、さぞ苦しかっただろう?死のうとは思わなかったのか?」
「っんで……知って、」
「ああそれと、この世界はどうやら我々が知る"物語"とは大きく違うようだ。お前、何か知ってるか?」
「……!?」

彼の言葉によって何かに気づいたことを言おうとしたと同時に、喉奥から押し上げてくるような吐き気がそれを阻止した。また責め立てようとした男を遮るかのようにサボが口を出す。

「やめろ。」
「!」

「──お前、彼女に何をした!」

過呼吸気味になる『名前』の背中を擦る。彼女を心配しつつ、彼は前に立つ男を鋭く睨んだ。

「……アハハハハ!私が、あの口にするのも恐ろしい、惨い所業を!?我々にはとても……フフフ、この世界に生まれたお前ならまだしもなあ?」
「!?」
「う゛っ……」
「〜っ、『名前』!」

言っている意味がわからないがとにかく『名前』の容態が危ない。嘔吐きとともに彼女の片手で押さえる口元から垂れる唾液、どんどん青白くなる顔色……今にも吐きそうだ。とにかくこの場を離れて彼女を安全な場所へ連れていくのが先だろう。

「安心しろ、もう我々の目的は果たせた。」
「目的?」
「我々はもとより『名前』を殺す気はない。情報収集が目的、だが──殺すのはお前らだ、革命軍。」
「へェ、俺たちを?」

返答する代わりに男は口元に弧を描きつつ今度はサボに銃を向けた。サボも余裕そうに笑む。片手で持つ鉄パイプがミシ、と軋んでいる。しばらく経った後に男はその銃を下げた。

「……今回は手を引こう、どうやら聞いていた話と違う。それに推測が合っていればまだお前はこの"銃"じゃなくても良いみたいだ。」
「まだ?──ハ、俺は能力に頼るつもりはねェよ。」
「頼る、ねえ。」
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