第12章 新たな刺客
「そんなに動揺しなくていいだろ?面白ェなあ。」
「いやするに決まってるでしょ!?……あぁ。」
言い合いはさておき、今は命の危機。サボは存外余裕そうだったとはいえ私は不意に死なない可能性は一切無いため油断ならない。それどころじゃないとため息をつきつつ、サボとともに前に向き直る。硝煙あがる、拳銃をこちらに向けたままの男が鼻で笑っていた。
「余裕そうだな、撃たないという保証もないのに。」
「よく言うなよ、お前のヘタクソな腕にはこれぐらいで十分だ。」
「……フ。」
男はまたフフ、と笑いながら拳銃から弾を取りだしてそのうちの一つを『名前』に投げた。急に飛んできたそれに驚きながら彼女は両手で受け止める。
「うわっ!?──銃弾?」
「それが何か。お前ならすぐわかるんじゃないか?」
「私が……これを?」
「フフフ……。」
なんだろう、あまりピンとこないが何を表しているんだろうか?と受け止めた銃弾を眺める。模様が何かを示していたり……などと考えていると横にいるサボが ああ、となにかに気づいた。
「わかるの?」
「……海楼石で出来てる。」
「えっ?これ、海楼石……。」
なるほどこれが悪魔の実の能力者に効く、能力を無効化する石なのかと物珍しそうに彼女は改めてそれを観察した。たしかにこの場にいれば見る機会はあっただろうが戦闘に出ないためかあまり目に入らず気づけなかった。
でも革命軍に所属する、戦闘も主とするサボならすぐわかるのに何故わざわざ私に聞いてきたのだろう?私に──────
「───あ、」
ハッとし固まる彼女にサボが異変を感じる。彼女の顔は先程までとは違い、みるみる青ざめていった。
「どうした、『名前』?」
「いや、私……まさか、えっと……。」
「?」
カタ、と微かに震えだす身体、銃弾がある手元。血の気がひいていくのを感じながら恐る恐る前に立つ男に目を向けた。彼は笑っている。
「なん、で……?」
「……。」
嫌な予想が過ぎってから、男の顔がさっき見た時より何倍も恐ろしいものに思えた。ゆっくりと男の口元が開く。
「……"蹄"は、痛かったか?」
「!!!」
背にある竜の蹄が、もう無いはずの痛みが強く刺さる。ふと存在を思い出した時とは違う、心の臓にも響く痛みが。一気に下がった血の気と痛みが重なり思わず嘔吐いてしまった。
「う゛、おえ……」