第12章 新たな刺客

「「！？」」

両者はそれに驚き会話を辞める。男は少し彼女から距離をとった。そうしてまた飛んできた何かが男を掠める。ふと既に地に落ちたそれに目を移すと、『名前』と男の傍にとてつもない勢いで投げ込まれていたのは拳ほどの大きさの石だとわかった。

「舐められたものだな……これぐらいでやられるほど俺はヤワじゃない。」
「サボ……。」

後ろを向くと吹き飛ばされていたサボがこちらに歩いてくるのが見える。視線に気づいた彼は小さく私に微笑んだ。その余裕のある雰囲気に男も笑みを浮かべる。

「常人だと当たれば即死と聞いたが……ふむ、お前はやはりそうでは無いようだな。」
「あれくらい俺にとって赤子をあやすようなもんだ。」

そう言い彼は鉄パイプをくるりと回しながら戦闘態勢に入り男に向ける。男は何かを熟考した後に口元の歯を覗かせた。

「離れろ、さっきの手合いで俺のほうが上だとわかっただろう？」

確かに衝撃貝で不意を突けたとはいえ効果は服が砂埃で汚れた程度、サボはピンピンしている。このまま続けていてもサボが勝つのは目に見えている。男は手にある貝に目を落とした後、自嘲するように鼻で笑った。

「ああそうか、ならば─────殺すしかあるまい。」
「えっ」

そう言いガチャン、と聞こえた音に反射的に振り向くと、男は何処からか取り出した拳銃をサボとの間にいる私に向けている。状況を把握出来ず身体が動けないままでいると、男は容赦なく私に引き金を引いた。

「は……」
「───させるか！」

ダン、と銃声が鳴り響くと同時に視界が変化して身体が横転する感覚が遅れてやってきた。続けてやってくる何かが被さった感覚と小綺麗な、花の香りに混ざって紅茶が微かに花をくすぐる。

ようやく我に返って私は今サボによって助けてもらったのだと気づいた。

「あ、あれ私……？？？」
「怪我はねェか？」
「──えっ、サ、ええ！？」

あまりにも急に物事が起きたせいで理解するのに遅れたらしい。今私は地に伏せ、横抱きの状態で目の前にサボがいることに気づき動揺した。いや彼でなくても普通に驚くこの状況、作品内屈指の人気キャラクターのせいもあって息が詰まるような思いだ。

「ハハハ！その様子だと大丈夫そうだな、よっと。」
「うわ！？」

されるがままに上体を起こされ口をパクパクしているとサボにまたも笑われた。