第2章 グラン・テゾーロ
けれども私の口は一つも思っていない癖に
「……そうかもね」
勝手に喋っていた。
くるりとバカラの方を向くと彼女は少しビクリと身体を震わせた
そんな彼女をまたも無視して『名前』はこやかに対応する
「バカラさん、1億ベリーはこのケースに。あとは主に渡してくれないかな。持ち歩くのが怖いの。」
数秒の間が過ぎ、彼女はハッとし表情を笑顔に変えた
「!はい、少々お待ちください」
そういい彼女はその場から逃げるように去っていった
その様子を見届け私は立ち上がりタナカさんもとい、エレベーターへ向かう
横目にみたテゾーロは何か言いたげな表情。そのほか周りの刺さるような視線を気付かないふりして私はその場を後にした
辿り着き壁をノックする。直後現れたタナカさんに『名前』は吸い込まれて消えた。
残されたこの場は少しピリついた空気。おい、とテゾーロがその場の沈黙を壊し手下に命令する
「__あいつを調べろ、絶対に……裏がある。」
…
「__ありがとうございました」
「いえ、では」
『名前』はバカラから1億ベリー分が入ったケースを受け取る。バカラはまたも逃げるように私から立ち去る。そんなに私が奇妙だろうか。
まあそれはおいといて、まだまだ時間はある。この間に天竜人から逃げれたならばどれだけいいだろう
「はぁ、そんな術はないけどさ」
にしても、よく考えてみればテゾーロの疑いの目からあっさり逃げられた
……いや、今私は泳がされているのか?
「面倒事にならないといいなぁ」
『名前』は辺りを見渡した後、船内にある店でも見て回ろうと思い、散歩がてら歩くことにした。
…
「……だいたい見たかな」
グラン・テゾーロの中は世界政府に1つの国として認められているだけあって都市部が構成されている。
三ツ星を掲げたスイーツ店、和洋中なんでも取り揃えた数々のレストラン、この場所に相応しい格好になる為の服屋__
「!」
とある場所でピタリと『名前』は動きを止めた
「貧富の差が出来上がっているということは……こんな場所もあるのか」
___路地裏を見つけた。
そこだけ金色に輝く周りとは違い何故かどんよりとした暗さが立ち込めている
「たぶん、いやきっと映画内では映されなかった場所」
私は好奇心を頼りに歩みを進めた