第12章 新たな刺客
『名前』はふと、先程の部下からきた電話を思い出しつつ、あの時に感じた違和感が何かを頭の隅で考えていた。彼との会話で何かがずっと引っかかっていた気がするのだが何だったのだろうか。
そんな、少しぼうっとしながら考え事をする彼女に気づいたサボが首を傾げつつ彼女に声をかける。
「何か気づいたのか?」
「どうってことはないけど何だか……。」
言い表す言葉が思いつかず口ごもる彼女にサボは急かすわけでもなく穏やかに言葉を待つ。数秒ほど経ったがいい表現が思いつかずもどかしくなった『名前』は、いつの間にか空にでていた手に目を落とし、その手を引っ込めて彼に向き直った。
「ううん、ごめん何でもない。次行こう、まだ終わったとは限らないし!」
少し不安になる返しではあるが話したくないのなら、と彼は追求せずに苦笑し返す。そんな彼に少しホッとした『名前』はごめん、と呟くようにもう一度言いつつ少し離れた先にいる彼のもとへ駆け寄った。
───が、その後ろにボンヤリと見える人影。ゆっくりと近づく誰かが見える。
「……あれ?」
ダウンタウン内に人がいることなんて珍しくない。テゾーロらによってギャンブルに敗けて定住するしかない人もいれば、私のようにたまたま通りがかった人もいる。だからそれに目が奪われるなんて理由はないのに。
「『名前』?」
サボが気づかないほど、恐るるにたりない人であるはずなのに、────なぜか、ものすごく、嫌な予感がした。
「…………サボ、後ろ。」
「ん?」
急に真剣な顔になった『名前』に対しサボは逆に彼女のほうに駆け寄ろうとした。───気づいていない。
「───避けて!!!」
「……っ!?」
ハッと振り返りようやく気づいたサボは間一髪、仰け反ったことで向けられていた刃が頬にかすむ程度に避けられた。相手はゆらり、と陽炎のように動きまたもサボに向けてナイフを振る。
「うおっ!?……ハハ、なんだ?俺に恨みでもあるのか?」
「……。」
「答えちゃくれねェか。───お前だな、この国を攻撃したのは。」
返答の代わりに再度ナイフを振り攻撃した。サボは一度体勢を立て直すために回転するように大きく後ろに下がり、『名前』のそばに立った。
「サボ!」
「大丈夫だ、お前が言ってくれたから助かったよ。恩に着る。」