第12章 新たな刺客
「それなら良かっ……?!」
そういい微笑む彼の頬の切り傷から血が垂れる。自分が言い遅れてしまったことで、ついに私はワンピースの住民の頬に傷をつけてしまったのだと一人背筋を凍らせた。
「ヒッ!?、いや全然良くないごめんなさい後で治療──」
「これくらい何でもない。それより……。」
言いながら前を向く彼に同じく目を向けると、ゆらゆらとまるで陽炎のように揺れ近づく、虚像のようにも見えた相手が近づいてきたことで、次第に姿がハッキリと見えるようになった。
薄暗いダウンタウンに染まるような真っ黒のコートをまとい、それについた大きなフードを深く被っている。周囲に容易に紛ることができる、その異様さに怖さを覚えた。手に持つナイフだけが白く輝いている。
「なにか、気づくべきことがあるような……。」
けれど何故だろう、この異様な感覚はそれだけが理由じゃないと思うのだ。
「……悪い、少し下がっててくれ。」
「あ……う、うん。」
違和感がありつつも一度『名前』はサボから少し距離をとり見守ることにした。彼の様子を見るに、相手の実力を測りかねているように思う。そんな相手が今、私を知ることで何を得れて、この国を襲うことで何を求めているのだろう。
そうしてる間に相手は一気に距離を詰めてサボに刃を向ける。今度は容易にかわして彼もまた鉄パイプを振り上げた。相手もまたその攻撃をナイフで受け止める。
「攻撃に躊躇がねェな、慣れてるのか?」
「……。」
「何も言わねェつもりか、まァいい───あとでゆっくり教えてもらう!」
そうして両者の攻撃の勢いがさらに増す。実力者である通りサボは依然余裕そうにし、相手もまたフードで顔が隠れているとはいえ変わらずに対処していた。このままどちらが崩れるのだろうかと暫く戦いを見ていると、先にナイフを持つ手首を撃ったことでサボが優勢になった。相手は少しよろけ、手が痺れたのか両手でナイフを離さまいと持っているが、サボは容赦なくパイプを振り上げ胴を突く。
「……ぐっ!」
「!やっと声が聞けたな、──男か。」
「……げほっ、げほ。」
軽く吹き飛び、鳩尾に入ったのか横腹を押さえて咳をする。そんな相手をサボは見下げて鉄パイプを相手の首元へ添えた。
「応えろ、お前ら何を考えて『名前』を狙った?」
「…………はっ、狙った?……ははは、違うな。」