第12章 新たな刺客
「……私を知ることとこの国を襲うことの何が関係してるっていうの!?私に直接来ればいい話でしょ!?」
「なんとでも言うがいい、俺は伝えたから後は勝手にするんだな。」
「待って、名前くらい───!」
ブチ、と私の声に従うはずもなく、電伝虫は無慈悲に切られた。唖然とするしかない私とサボは突然起きた出来事にただただ驚くしか無く、無言で目を合わせる。
数秒ほどそのままだったが、私はこの時一体、どれだけ酷い顔をしていたのだろう?彼は私の肩を掴んで少しだけ身を引き寄せた。
「!?、サボ──」
「相手が誰か俺もわからねェけど──お前の考えてるようなことにはさせねェ、俺を信じろ!」
「っ……!」
不安と戸惑いに塗れていたのであろう私を安心させるため、彼はそういいニカリと笑った。ああ彼にそうさせてしまうなんて、私はまだまだだ。と溢れそうな何かを堪えながら、少し俯いていた顔を上げてきちんと彼の目を見る。
「ありがとう、心強いよ。」
「!、───ああ、任せろ。」
眩しい彼の笑顔と頼り強く感じる彼の姿にどこかルフィを思い起こさせた。──ああ私、今後もこの世界に来てからもずっと……彼に助けて貰うんだろうな。彼に会うまでに少しでも役に立てる人にならなければ。そう決意し私は彼の笑顔に呼応するようにニカリと笑った。それを確認したサボは安心したのか表情が微かにほころび、彼女の肩を手放す。
「たしかダウンタウンって言ってたよな、声だけじゃ検討もつかねェしその周辺を警戒するしか──」
「待って、私多分この辺にいるだろうって心当たりがある。──それに私なら、この騒動の相手も気づける。」
早速彼が動きかけたのを『名前』は言い止めた。彼女は数ヶ月とはいえこの船で過ごした身、日常茶飯事の暴動と実際に我が身に襲撃を受けたことでこの国では少なくとも、サボよりは精通しているだろう。
何より、何度も紙面で、映像でこの世界を見てきたことで、目が肥えた為か、見た目だけである程度、相手が何か良からぬ企みを持っているかどうか勘づきやすいからだ。
「ほう、その様子だと結構自信ありそうだな?」
少し意地悪そうに言う彼に『名前』は無邪気に、そしてどこか頼もしく微笑む。
「……うん、"信じて"!」
彼は一度キョトンとした後、微笑を浮かべながら「ああ。」と答え、2人とも前を向いた。