第12章 新たな刺客
「……ええと、とにかくTHE REOROには戻らないでください!我々が対処していますが、バカラ様やタナカさんにも協力を仰いでいる状況なんです!」
「!?」
部下の必死な様子、そしてバカラさんやタナカさんも応戦していると聞き、相当に相手は厄介だと知る。たしかにそんな状況で私が行けばややこしくなる。ただ少し引っかかるのは何故だろう。
「ひとまず、『名前』様が無事で良かった!──市街地に今被害はありませんが、できる限り我々から離れた場所へ避難してください!」
「わ、わかった……!絶対に、全員無事でいて!」
「はい!では!」
そうして彼は慌ただしく電話を切り電伝虫は事切れたように表情を無に帰した。数秒ほど無言になった後に横にサボがいたことを思い出して我に返る。彼も多少なりとも圧倒されていたのか目を見張っていた。
「ご、ごめんまさか、こんな内容だと思わなくて。」
「いや、俺のほうこそ席を外さずに勝手に聞いて悪かった。──ただ大丈夫か?これからどうする?」
「あ……。」
『名前』は今サボにTHE REOROまで送って貰っていた、その途中だったことに気づいた。しかし行き先に来るなと今しがた部下に言われたばかり──ひとまず行き先を変えなければ。
「ごめんなさい、急だけれど行き先を変えてもいいかな。」
「問題ない、──となるとTHE REORO から出来るだけ離れていて安全な場所がいいんだよな。」
「あっそれは心当たりがあるからそこまでお願い、ええと場所は───」
『名前』が言いかけたその時、また彼女の持つ電伝虫が着信を受け、声を発した。それに思わず言葉が止まり両者は目線をそれに移す。
「……また、着信。」
「さっきの奴から追伸じゃないか?」
「多分……。ごめん、一旦出るね。」
サボが頷いたのを見て『名前』はまた電伝虫の受話器をとった。今度は一呼吸分の間があったので普段のように『名前』から応答する。
「はい、こちら『苗字』。どうしたの?もしかして被害が広がって──」
「お前が『名前』か?──死に損ないの成れの果て。」
「「!?」」
明らかにさっきと違う男の声、言われないであろう罵倒に『名前』も、ただ居合わせたサボも相手を察した。通話の相手は今起きてる異常事態を起こした輩だと。