第12章 新たな刺客
『名前』がそういい彼に掴まれた手を振りほどこうとしたが微動だにしない。思わずえっ、と声が漏れて視線を手から彼に向けると笑顔なのにとてつもないドス黒さを感じゾッとした。
「!?」
「ハハ さっきまでは契約だったからな、この国の者として断る理由があったが……これは俺たちの問題だろう?」
既に私にはどうにもできない、微かな揺れも起きない掴まれた手に少し強く力が入る。微妙に痛い。
「あ、あの……?」
「そんな顔しないでくれ、俺はただ仲良くなりたいだけさ。……だから悲しいことさせないでくれよ。」
___ミシッ。
彼がそう言うと握られた手から骨が軋むような、明らかに鳴ってはいけない音が鳴る。その手にある痛みは僅かなのに退路が絶たれたのを確信できた。
「ひっ!?(ヤバい、このまま断り続けたら私───)」
───手骨を卵みたいに割られる!
手が砕け再起不能になってしまう恐怖を感じた『名前』は咄嗟に彼の問いかけに了承してしまった。
「わかった、わかりましたから!……トモダチ?になるから、私の手を粉にしないで!」
「本当か!?」
それを聞いたサボはたちまち純粋無垢な少年のように両手をあげ喜び、彼女の手を解放した。『名前』は自身の手の無事を確認し安心する。
それと同時に今頃必死に問題を解決しようとしている『青年』に新たな問題を作ってしまったことに心から反省した。どうしても片手を犠牲にしたくなかった、本当にごめん『青年』。
「嬉しい……ありがとう。用心棒も護衛も俺に任せてくれ、俺は"トモダチ"には傷一つ つけさせない!」
「あはは……お願いします……。」
その"トモダチ"の手骨を木っ端微塵にしようとしてたのお前だろと思いつつ、『名前』は諦めの境地に達しながら苦笑した。
大丈夫、今は彼に脅されたからこう答えただけで表面上だけ取り繕っていればいい。関係の名称が違うだけでレイズ・マックスとの契約のような対応をこちらがすれば変わりないだろう。そうすれば問題事も発生しないのだから。そうすれば『青年』に迷惑かけることもない。
そう自分に言い聞かせ彼のほうをチラリと見ると、嬉しそうに微笑む彼。どこか、漫画で見たエースとルフィの面影を感じる。
ああ、大好きな人の兄弟には敵わないなと『名前』は同じく彼女も微笑んだ。