第12章 新たな刺客

引き下がらない姿勢をみて彼女は分かりやすく狼狽えている。今回はどうしても引き下がれないから彼女に対して真剣に向き合うが……何となく、レイズ･マックスも黄金帝も『名前』を無下に扱わない理由を察した。


「確かに強気になり過ぎていた。受け入れて欲しかったからそうしたが……そう感じてしまうのも無理ない。悪かった。」
「……？」

謝られると思わなかった『名前』はサボが一体何を言いたいのかわからず困惑する。強ばっていた顔を歪ませ徐々に首を傾げた。

「それに"契約"と言ったのはこのほうが受け入れやすいかと思ってそう言ったんだ。ただ逆に不審に感じてしまうなら言い方を変えよう。

───おれ と"トモダチ"になってくれ、『名前』。」

「……は？」

『名前』はサボから出た予想外の言葉に思考が停止し、時が止まったような感覚に陥った。そんな彼女を無視してサボは笑顔で話を続ける。

「元々話を聞いてた時からお前に興味はあったんだ、面白いヤツがいるって──だがバカ正直にそう言うとお前すぐ逃げるだろう？だから初めは契約としての関係ならと思ってさ。」
「いや、ええと……待って」

『名前』は彼の口から出る言葉がどれも受け入れがたくなり、とにかく状況把握のため整理しようといっぱいになっていた。かまわず彼はまた続ける。ああ全然追いつけない、と視界がだんだんグルグルしたような気になる。サボは依然変わらぬ笑顔のままだ。

「けど逆にそれが重く感じるなら撤回しよう、俺はただお前と"トモダチ"になりたいだけなんだ。」
「一旦話を整理させて、サボが私と？」

「おれとしてはただそれだけなんだ、レイズ･マックスが豪運だって言ってたし──あぁ頼まれたのは本当だが。」
「レイズ･マックスがサボに……違う今のサボは──」

彼女がそう呟きながら頭を抱えようとした手をサボはとりガッチリと掴んだ。


「改めて"トモダチ"になろう、『名前』！」

「────いやだから無理なんですけど！？」

ニッコリと笑うサボに即座に答える『名前』、だがさっきまでと違って彼は掴んだ手をそのまま離さず、そして笑顔のまままだ引き下がらなかった。

「そんな悲しいこと言うなよ、まだ知り合って間もないのに。」
「普通だからこそ断るでしょうよ！？──じゃなくて無理なもんは無理ですって！」