第12章 新たな刺客
…
「───おっと、ハハハ!そんな驚かなくていいだろ?」
「い、いや……なっ、は……?」
手の力が抜けて滑り落ちた珈琲を彼はすかさず掴む。放心する私を見て彼はそれはとても爽やかに笑いながらその珈琲を差し出した。
『名前』はその珈琲のことが頭からほぼ抜けてしまった。いや……正直、今抱えていたルフィのことや『青年』のことも考える余裕が無くなってしまった。
「???もしかして俺の事知らないのか……俺の名は__」
「───なんでここに、サボがいるの!?」
目の前に、あの "サボ" が現れたからだ。
「なんだ俺のこと知ってるじゃないか!そんな他人のような反応しないでくれよ。」
とうの彼は私の反応を笑いながら、そして私と彼がまるで以前からの知り合いのような態度で接する。同姓同名だと思いたいが彼の容姿、服装そして声から察するに───
「まあ実際に会うのは初めてだよな……俺の名はサボ、革命軍だ。」
──うん知ってた!もう反論の余地ないです認めます!
『名前』は一度深呼吸をして彼から手渡されていた珈琲を受け取った。ずっと押さえつけていた人差し指を眉間から離して意を決し彼に向き合う。緊張しすぎてもはやカタコトになっているが。
「初めまして、その口ぶりから察するにご存知かと思いますが私はこの船に勤めている『名前』です。」
「堅苦しいなあ、別にそんな気を遣わなくていいのに。」
「恐れ多いです……!」
僅かに声を震わせながら『名前』は無事自己紹介を終えた。サボは相変わらず爽やかな笑顔でその高身長故に彼にその意思はなくともこちらを見下ろしている。何でこうなってしまったんだろう?だが無用なトラブルは避けたい。きちんとお相手しなければ。
「その……気になっていたのですが何故私を知っているんでしょう?」
「レイズ・マックスから聞いたんじゃないのか?」
「えっ」
『名前』は何のことだと聞こうとしたが瞬間脳裏に以前レイズ・マックスと話した内容が浮かび上がり言葉が止まった。
『安心しろ、俺が空けている間の代わりはもう呼んである』
『あぁ昔に面倒見てやってた奴がいてな、いずれお前にも紹介しようと思っていたところだからちょうどいい』
──つまり彼が面倒を見ていた、紹介しようとしていたのは……サボということ?
「──はあ!?」