第12章 新たな刺客
「……体に障るか、無理はしていないか?」
「何も無いですよ、私だってたまには休憩ぐらいとります。」
いつも以上に心配性なテゾーロに『名前』はくすりと笑う。そらそうだ、この船のトップが来ても関係なく業務を優先する、仕事人間の彼女がソファに腰掛ける姿は誰にだって珍しい。
それに彼女はつい1週間前まで満身創痍だったのだから心配されて当然なのだ。
「ならいいが……」
「ええ?そんなに心配してくれるんです?」
「……」
少し意地悪そうに言うとテゾーロは舌打ちをして顔を逸らした。少し調子に乗りすぎたなと『名前』は軽く反省しつつ、彼の心配を素直に喜ぶ。
様子を見に来た自分が馬鹿だったとため息ついたテゾーロ。ふとテーブルの上にある新聞とエースの手配書に目が入り思わず彼は2つを手に取った。少しだけ彼のその動きに緊張した『名前』の身体が震える。
「相変わらず外は騒がしそうだな。」
「ドラマのようですね、でも貴方も気にされてるとは思わなかった。」
「……私が興味を持っていると言うよりは、上客との話題作りに目を通している。ただまあ、こいつの言う"新たな時代を感じる"には私も同意する。」
フ、と笑いつつ彼は新聞に載る、状勢に対して意見を述べる一人の批評家を人差し指でこつこつと突き示す。この地位に君臨できる彼でも麦わらの一味や最悪の世代に思うところは当時からあったようだ。少し面白い。
「へえ……あなたにとって海軍か海賊、どちらに気持ちが傾きます?」
「?、何が言いたい。」
「世間では正義を貫く海軍、対して野蛮でめちゃくちゃだと言われる海賊……大抵は海軍を肯定するでしょうけれど。でも表も裏も知っているあなたから見て世間はどう感じるのだろうと思って。」
「……私から見て、か。」
テゾーロはふむ、と新聞紙を改めて見返し答えを考えた。最悪の世代と呼ばれる彼ら、天竜人に手を出す若者。荒れ狂う世間に何を思うんだろう。考える彼を眺めていると視線に気づいたのか、彼は数秒目が合ったあとに少し笑った。
「私はそうだな……ハハ、この国にまで影響が起きない限りはあまり関心がない───だが見てる分には野心溢れる者どもの行く末を見るのは楽しいと感じるよ。」
「……昔はこうじゃなかったんです?」