第12章 新たな刺客
さっきまでの表情は消え、いつも通りに近づいた『名前』を見て『青年』は彼女に背を向け部屋の入口へ向かった。
「とにかく!俺はしばらくその為に頑張るからあまり君のことを気にできない。君、最近それじゃ本末転倒だって言うのに死に急ぎ野郎もいいところだし。生きるのに努めてるんだよ。」
「──あっそれは大丈夫、君の助けアテにならないし。」
「え゛っ、なんでっ!?」
決まった……!と言わんばかりの表情と仕草の『青年』を『名前』は簡単にぶち壊す。想像と違った反応に『青年』は大きく振り返り反応した。
「いやだって今までずっとそうじゃん、直接的に助けてもらったことないと思うんだけど。」
「ぐはっ!?……わ、わかってたけど、今から大仕事しようとしてる俺に酷くない!?」
真面目に反論する彼に確かにそれもそうか、と『名前』は笑いながら適当に返事した。『青年』は納得いかないものの、彼女の元気そうな姿に改めて安心する。
「じゃあ俺は行ってくるよ、とんでもなく重要なことがあったら直ぐに帰る。君が本当に命の危機に陥ったときは助けにいくよ。」
「……助け、ねえ?」
「大丈夫!俺、"勘"は良い方だから!」
あ、そう。と『名前』は冷めた目で返答した。もはやその反応も逆にわかっていた『青年』は一呼吸置いたあと、彼女に向き直る。
「俺が直してくる間する君の仕事は2つ。このことを誰かに悟られないこと!そして───生きること!わかったね?」
「うん、わかった。」
そう言いニコリと笑うと『青年』も返答する代わりにニコリと笑顔になり、そのまま指を鳴らし姿を消した。
「悟られないこと……生きること……か。」
ソファに一人座り一気に静かになる自室に何故か安堵を覚える。思えば頭をぶん殴られてからこの報道を見た私にはずっと焦りがあった。『青年』のおかげで少し気が紛れたのだろうか。
ふう、と一息ついているとノックも声掛けもなく自室の扉が開いた。この時間に訪れる相手は容易に予想できるのでそのまま目線だけ開いた扉に向ける。
「!……休憩か?」
「ええまあ。お疲れ様です、黄金帝。」
いつも仕事机に向かい一心不乱だった『名前』がソファに座り休息をとっているのを珍しそうにテゾーロは見た。そのまま彼は同様に彼女のほうへ行き向かい側に座る。