第2章 グラン・テゾーロ
気がつくと後ろから拍手しながらバカラが近づいてきていた
「AMAZING!おめでとうございます『名前』様……ってあんまり喜んでないんですね?」
「あぁハハ……えっと、慣れてなくて」
バカラは納得いかなそうな表情だがこのお金は本当にどうでもいい
ともかく賭けた2億ベリーは10億ベリーに変わってしまった。元々持っていたケースには当然入らない。
「バカラさん、もうこれじゃはいらないからケースを貸していただけませんか?」
「!かしこまりました」
バカラは近くの手下を呼びジュラルミンケースを持ってこさせた。
それにしてもただでさえ不運なのに、賭け事ではこれほど勝ってしまうんだろう。この運を用いて生まれ変わりたい。今よりも更にモブでいいから。
と叶わぬ願いに思いを馳せていると辺りが騒がしい。声がするほうを向くとテゾーロが登場していた。
___待って、テゾーロ!?
驚き固まる『名前』をよそに、テゾーロはこちらを見るなり天竜人とは違う気味の悪い笑みを浮かべる
この騒ぎ方、作中では当然のように現れていたから考えていなかったけれど、本来はレアなのだろうか。
テゾーロは『名前』の方に近づき貼り付けたような笑みで話し始める
「これはこれは、珍しいお客様だ。申し遅れました私はこの船……グラン・テゾーロのオーナー、ギルド・テゾーロです」
あなたのこと以前からとても知ってましただなんて言えない。『名前』はにこやかに応えた。
「いえこちらこそ丁寧な対応をして頂きありがとうございます」
テゾーロは丁寧に挨拶をすると『名前』の手をとった
「貴方の強運、見させて頂きました。良かったら私と勝負、しませんか?」
「!?(まさか本当にテゾーロ、ハメる気なの?)」
奴隷の私を?
少し動揺したのが表れていたのかテゾーロが顔を覗く
「おや、どうされましたか?……緊張されて?」
そういう彼の目は笑っていて、目の奥からドス黒い何かが見える気がする。
__彼の運をもってしてなら、私の運も尽きるだろうか
もうこの際負けて天竜人に罵られてもいい。仕返したいしあえて受けて立とう
『名前』は添えられたテゾーロの手を滑り込ませるように絡めた
「!」
「喜んで」