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【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第11章 腕っ節のない女


そうして2日ほどたったころ、『名前』は依然変わらず病室にて過ごしていた。この世界に来てから働かずただひたすらぼうっとするのは初めてかもしれない。

現世では嫌だった仕事が辞めるという選択肢が無かった結果、今やしていないことが落ち着かないのでむず痒く思う。

……もちろん、頭から血を流して6針も縫った患者に仕事なんて周りが許さない。部下らがお見舞いに来てくれたときに、半ば冗談に暇だし書類整理をしたいと口走りかけたが直ぐに濁した。──その後ろに立っていたバカラお姉さんとタナカさんから一瞬滲み出た、圧が凄かったからだ。

だが船医が言うには途中心肺停止まで陥ったにもかかわらず回復スピードは順調だという。変な夢を見たこと以外には後遺症も無い。ただし別の問題が彼女には発生していた。

「部下やバカラさん……ならわかるけど、なんでドフラミンゴにまで私の容態知られてんの!?」

どこから聞きつけたのだろうか、ドンキホーテ海賊団からお見舞いの品として大量に果物とお菓子が届いた。ご丁寧に彼から、では無く『ドンキホーテ海賊団から愛を込めて』と書いてある。

彼のことだ、私への心配というよりは見返り要求が真意の嫌がらせだろう。これを届けに来たテゾーロが苦い顔をしていたのに私は珍しく共感した。

彼らへのお礼はまた考えるとして……そんな療養生活を送っていたが私の身体もだいぶよくなり1週間後には復帰することが決まった。それまでに失ったであろう勘を取り戻さなくては。

そう思い『名前』は先程テゾーロが届けた見舞い品に加えて置いていった、新聞紙いくつかを手に取りページを捲っていた。数週間前に麦わらの一味がゲッコー・モリアを倒したとの記事を見たが今どうなっているんだろう───なんて思っていたのに。

「えっ……は……!?」

『名前』は大きな一面の記事に驚愕のあまり、それ以上の言葉が出なくなってしまった。呼応するようにバイタルセンサの規則的な音が早まる。

その一面は麦わらの一味のルフィが天竜人を殴ったこと、それは物語の筋書き通りだった。遂にだと思ったのに。


───文末に麦わらの一味みな、無事シャボンディ諸島から逃げ出したと書かれていた。

「バーソロミュー・くまが追走……物語が、変わったの……!?」

その報道の衝撃が身に余りすぎたのか、私はまた意識を飛ばしてしまった。
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