第11章 腕っ節のない女
「何なんですか!急にガラガラって……私の感謝の気持ち返してくださいよ!」
「ハハハハハッ!……これは子守りだろう?よく寝ていたなあ、寝る子は育つと言うじゃないか、にしても、反応──フッ」
彼はガラガラを『名前』の枕元にぶっきらぼうに置き、なんとか笑いを抑えようとするが我慢できず吹き出し振り出しに戻る。それを冷めた目で『名前』は見つつ、置かれたガラガラを手にとりその愛らしさにため息が出た。
「聞いてた話と全然違うじゃないですか、いやまあいいですけど……ありがとうございました。」
「ハハハッ……──ああ、礼を言うならあの付き人に言うんだな」
「付き人……! 彼は、怪我は無かったんですか!?」
そういえばあの時自分にいっぱいで付き添いの彼のことが完全に頭から抜けていた。彼にリッカやテンポのことを託して以降、彼に飛び火は無かっただろうか?
焦りが入った彼女の勢いに少し驚いたテゾーロは若干目を見開いたもののすぐに先程までの表情に戻った。
「ああ無事だ。なにせお前が課した責務を全うした上で私を呼んだのは付き人だからな。」
「よかった、──彼が貴方を?」
彼が私のその後を察して助っ人を呼んだのは紛れもなく英断だ。そのおかげで私は死なずに済んだとも言えるのだから。とはいえ、彼がタナカさんやバカラさんでも即座に来るのが難しい場であるだろうに。一番来なさそうであるテゾーロが来れたのは意外だ。
「あの、差し支えなければあの時何故来てくださったんですか……?」
「!ハ、私がそんな非情に見えるか。」
嘲るように言う彼にまあそれは否定できないな、と思いつつ『名前』は我に返り自分の中で話を戻した。
「それは…………いやそうじゃなくて!あの日はVIPルームのご予約もあったはずです。だから、その……。」
「……」
テゾーロは一度どう答えようか考えた後、何故こんな玩具のために答えを迷っているんだろうかと気づきそんな自分をバカバカしく思った。
「……私が玩具をどう扱おうと私の自由だろう?」
「それ答えになってないですよね。」
『名前』が呆れたとテゾーロに冷めた目を向けると、彼は鼻で笑いつつ席を立ち、彼女の質問に答えないまま背を向けた。
「それだけ喋られるならもう平気だな、しばらくは安静にしていろ。」
「……ありがとうございます。」