• テキストサイズ

【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第11章 腕っ節のない女


タナカさんがテゾーロにそう言うと彼もハッとし『名前』を見る。頭部から血を流す彼女を早く救護に回さねば。彼女は豪運を持ち、正体不明だとしても一般人には変わりないのだから。

「タナカ、後は頼む。」
「承知しました。」

一方2人をぼうっと眺めていた『名前』がその会話を聞いてタナカさんに目を向ける。あの部下たちはどうなってしまうんだろう。

「タナカ、さん」
「!──『名前』様、ご安心を。」

心配そうにする『名前』に気づき強ばっていた顔を少し穏やかに戻し彼女に微笑む。その笑顔の真意が何かと聞こうとする前に、テゾーロが私を姫のように抱えてタナカさんに背を向けたので謎のままとなった。

いつもなら周囲に変な勘違いをされるのが嫌で暴れて降りる私だが、さすがに酒瓶でぶん殴られた頭では厳しい。大人しく彼に運ばれるほかなかった。ただいつもより抱く彼の手が強く、優しい気がする。

ふと自分が今血だらけで酒まみれだったことに気づき、彼の衣服についてしまうと『名前』は伝えようとした。

「! あの、汚れ……」
「いい、気にするな」
「……」
「少しだけ耐えてくれ、すぐ治療させる」

なんとなく喋るのを躊躇って『名前』は頷いた。どこかホッとした彼は眉間を歪ませながらも若干口元がほころぶ。彼らしいような彼らしくないような、そして私たちを見た利用者らこと周囲のざわめきが少しこそばゆい。

そうしてしばらく歩くと彼らの前に大きなカメカーが現れた。VIP専用の少し豪華なタイプのものだ。テゾーロはそのカメカーを手配したであろう部下らに何か喋ると、『名前』を慎重に席に乗せた。彼もまたその横に座る。間もなくしてカメカーは走り出した。

座席に身を任せて揺れられていると、頭頂部から流れてきた血が目に入り視界を赤に染める。面倒で目を閉じそのままにしているとテゾーロがそっとハンカチで拭ってくれた。

あ、と声を漏らしつつ彼のほうにゆっくり向くと、いつもの彼からは想像できないくらい、心配そうな顔で私を見ている。

「……ああ、その……」

何か言いたげではあるが何を言えばいいのか、悩んでいるのだろう彼のもごもごとした口元と八の字の眉があまりにも彼らしくなくて。『名前』は ふっと笑う。

「そんな顔しないでください、貴方らしくない。」
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp