第11章 腕っ節のない女
「……」
「どうした?図星つかれてだんまりかァ?」
──とはいえ、ここで反抗しては彼らの思うツボ。新人教育はあとでやればいい。それに私よりも優れた適任者はいっぱいいる。そう落ち着けて私は彼らの言葉を少し深い呼吸で済ませた。対して男らは私は堪えているのだと認識し、更にまくしたてる。
「あのテゾーロ様が認めるほどのテクって何したんだ?教えてくださいよ、先輩」
「それは企業秘密ってか?ギャハハハ!」
「……公衆の面前ですよ」
「力もねェ、身体を売るしか能がねェアンタのワザはさぞかしいいんだろうなァ〜ハハハハ!」
彼らの言葉で通りすがりの周囲から疑いの目が私に向けられる。可哀想、哀れ、好奇の目。……収まる気配がないので一度咳払いをして諌めようとするが効果はない。場所を移すために連れていくだけでもこんなに大変だとは。もう応援を呼んだ方がいいか──……
「──そんなんじゃねェ!謝れよクソ野郎!」
「「「!?」」」
醜悪な彼らの口を止めたのは周囲を通る大人や、まだ中にいるであろう付き添いの彼や私ではなく、扉から飛び出してきたリッカだった。
驚いた私と男らは先程までいた店に目を向ける。リッカは殴られて大きく腫れ始める頬のまま、勇気をだして私の味方になってくれたのだ。思わず彼の名がこぼれる。
「リッカ……」
あ然としていると、続いてリッカを連れ戻しに来たダブルダウンが開いた扉から慌てて出てきた。
「──おい、何やってる!」
「やだよ、謝ってもらってねェし……それにアイツがあんなこと言われて、黙ってられるかよ!」
「!気持ちはわかるが……ってバカ──」
一瞬たじろいだダブルダウンを躱してリッカは私の前に立ち、男らに怒鳴った。
「俺の妹を殴ろうとしたことを謝れ!」
「は、はぁ?」
息を荒くしながら、彼はそれに、と続けた
「それにお前らより弱いかもしれねェけど、でもお前らより何倍もカッコイイおばあちゃんなんだ!」
「リッカ……っておばあちゃんじゃないっつってんだろが!!!」
真剣に話すリッカに般若のような顔をしてツッコミを入れる『名前』。その様子を見て大の大人が子供に説教されているという事実を受けて、ワナワナとしながら男らは震えている。
「ガキに女に、お、お前ら……クソ、なんなんだよ……!」