第11章 腕っ節のない女
「先にやったのはお前の妹だろうが」
「うるせェ!子供に手を出して、大人気ないぞ!」
「あぁ!?っンのガキ!」
「うわあ!?」
「リッカ!」
反抗された男は今度はリッカに殴りかかろうとした。『名前』が駆け寄るが間に合わない。リッカは攻撃に備え目を固く瞑る──が、来ない。
来ない攻撃に戸惑い目を開けると騒ぎにようやく気づいたダブルダウンがリッカと男の間に入り、男の腕を掴んで制止させていた。
「ここの責任者だ。──話は俺が聞こう。」
「ダブルダウンさん……!」
「はあ?じゃあテメェが責任とんのかよ!」
『名前』は男がダブルダウンに気を取られているのを確認して、リッカとテンポを連れて彼らから距離をとり、彼らの安否を確認した。
「リッカ、大丈夫?視界は?頬っぺだけ?」
「え、あ……だ、大丈夫……」
「テンポは?」
「うぅ、ひぐっ大丈夫、でも、お兄ちゃんが」
テンポは無事そう。リッカも頬が腫れているものの、この様子だと重症ではないようだが目に傷があるかもしれない。私が動いたのをみて近くに来ていた付き添いの彼に声をかける。
「救護班を呼んで、後遺症ができたら大変だから」
「ですが……」
「債務者だとか関係ない、子供でしょう!?費用は私が出すから早く!」
「は、はい!」
彼は頷きリッカとテンポを連れて店の奥の席に行く。それを見届けて前を向くとダブルダウンと男らはお互い譲らない雰囲気。ここで黙って見ていたらダブルダウンに被害が及ぶだろう。──それを静観するなんて私はできなかった。
「!?お前、危ないから──」
「いいから、リッカとテンポのとこに行って」
『名前』は半ば無理やりダブルダウンをどかして男らの前に立った。彼らは突然出しゃばった私を睨む。
「自己紹介が先ですね。私はこの船の幹部 『名前』です。お見知り置きを。」
そう言いつつ差し出した名刺を1人の男が手に取り、連れも覗き込むように眺めると笑いながらその辺に投げ捨てた。
「お前が幹部?」
「嘘もほどほどにしとけよ ねーちゃん!」
……どうやら彼らは私を舐めているどころか素性も知らないらしい。
「嘘だと思うならテゾーロ様やタナカさん……まあ誰でもいい。電話でもなんでもどうぞ。それより不当な内乱は規約違反ですよ。」
「先にやったのはあっちだろ!?それにアイツら債務者だ!」