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【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第11章 腕っ節のない女


そうしていると彼は彼女の後ろに立ち、軽く記事を覗き込む。映し出された画面と印刷機におかれた大量の書類に対してなぞるように視線を向けてから声をかけた。

「……調子はどうだ」
「新聞に目を通せるくらいには順調です。皆さんも復帰してきていますし滞っていた雑務も追いついてきています。今まで通りにやっと戻ったってところです。」
「そうか」

それに『名前』もだいぶ業務にも慣れてきてコツも掴めたため、彼女自体の仕事に追われることもほぼない。ちょっと増えても現世で言う一般企業の定時から1〜2時間過ぎあたりには帰れるレベルだ。

『名前』はいつも通り昼のショー終わりに自室を訪れる彼に、答えなんてわかりきっているいつも通りの質問をした。

「今日のショーも完璧でしたか?」
「フッ 愚問だな、当然だろう」
「それは何より」

そう返事して『名前』は少し残った珈琲を一気に飲み干して席を立った。部屋に来た彼の珈琲を淹れるためだ。

「珈琲淹れます。──いつも通りでいいですか?」
「あぁ」
「わかりました」

返事を聞いた『名前』は空のカップを持ってキッチンへと向かった。だいたいショー終わりに訪れてくる彼はミルクを少し入れた珈琲を好む。いつもはブラックが多いがショー終わりの体にはきっと少し甘いくらいが欲しいのだろう。

けれど私はそこに秘かにほんの少しだけ砂糖をいれる。最初こそ彼の言うとおりにつくっていた。だがある日酷く疲れていた時に間違えて私と彼の珈琲を逆に渡してしまったが当の本人は一言「美味しい」と言葉を零した。流石に間違えたと気づいた時は血の気がひいたが。

それ以降、何回か意を決し試してみたがやはり少し砂糖を入れるほうが彼は比較的嬉しそうに飲んでくれる。いつもの彼からは考えられないほど綻んだ表情で。

それを見てからは私はなんとなくこの時間が日々の楽しみの一つになってきつつある。少し癪に思うがまあそれとこれとは別だ。『名前』は2杯の珈琲をソファ前のテーブルに置いた。既に彼はソファにくつろぎ頬杖をつき、数枚の書類に目を通している。幾枚の企業による提案書を仕分けし判子を押してくれていた。

「いつも言ってますけれど無理しないで下さいね、私の仕事を手伝って下さるのはありがたいんですけれど」
「そうはいうが──」

彼はこちらに顔を向け私を鼻で笑う
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