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【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第11章 腕っ節のない女


───あれから数週間だろうか。

またも騒動が起き大波乱に巻き込まれた『名前』はいつも通り、自室で職務を全うしていた。だが現世での社畜経験で事務作業には慣れている彼女が珍しく手を止め、新聞紙片手にため息をついている。

本来ありえない突然のクロコダイルの登場、そして(主な理由はテゾーロへの当てつけだろうが)私個人に対する明確な敵意をもっての襲撃。正直彼女にとって今までの出来事と比べると桁違いなものなのだ。

なぜなら彼女の願いはもちろんこの先起こりうるはず事象が無くなりかねない現象の発生に『名前』の心労はとても大きなものとなっていたためである。

そういう時に頼りたいが肝心な時に限って現れない、それどころか時が経った今もまだ姿を現さない『青年』の力を借りれず、なんとかあの形で終わらせられたものの、本当に良かったのか私にはさっぱりわからない。

そのためこの所世界経済新聞を見る度に、彼の脱走がバレて記事になっていないだろうかとか同様の本来ありえない事件がおきてないだろうかとかドキドキとしてしまう。気が休まらない。

意を決してぱらりとめくる。───いつも通り、知らない海賊の微々たる差で賞金が変わったがための手配書となんてことない経済状況の記事のみだった。

勿論、とある島でのとある海賊たちによる闘争の勝敗や一部で有力視されていた海賊の没落の噂だとか危ういニュースは載っているが大海賊時代であるこの世界ではそれが普通である。

ただ数週間経ったとはいえクロコダイルの脱走があったそれ以降、むしろ怪しいくらいに彼のこともインペルダウンのことも記事では取り上げられていない。それどころかインペルダウンの伝説の御話がたまに専門家に語られている。

それはそれで不安になってしまう私は変なのだろうか?彼が脱走したことに誰も気づかないほどザルな施設ではないはずだが。とはいえ、インペルダウンに直接彼のことを聞くのもどうなんだと思い、私の中でモヤモヤが増幅するばかりである。

「……結局クロコダイルはどうなったんだろう」

ぽつりと呟き横に置いていた珈琲に口をつけつつ他の記事も読んでいると自室の扉が開いた音がした。見なくてもわかる、テゾーロだ。

もはや何も言わずに入ってくることが常となり『名前』は初期は毎回していた動揺もなくそのまま新聞に目を向けていた。

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