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【ONE PIECE】2 yars a GOLD

第10章 砂と予兆


───そうして、『名前』は初めて『青年』に出会った時に連れられた、この船の端の海が見える、静かで綺麗な空を見ることが出来るあの場所へたどり着いた。

先程まで走っていた時に荒れた息を整えつつ、荷物を持ったままふらふらと歩く。そのまま彼が座っていた木箱に腰掛けた。

焦っていて気にしていなかったけれど、全速力で走っていたから横腹は痛いし何より暑い。歳を感じる。

そういえば今はまだルフィは17歳、例え社会人の成人した大人が10代の為に頑張ろうとなど考える私に今更可笑しさを感じた。

まあこの世界はあまり互いの年齢を気にしているわけではないにしろ……身体はこの通り悲鳴をあげている。

人差し指の第2関節を眉間に押し当てつつ、『名前』は誰もいないこの場で『青年』を待つことにした。

「……どうしよう、彼がここに来たとしてなんて言えばいいか」

そもそもクロコダイルがこの場にいたとして、私と『青年』はどうやって元の物語に戻すのだろう。

「少なくとも私は……いや、クロコダイルはインペルダウンに戻って貰わなければならない。まだその時じゃないから……」

きっと方法はどうであれ、それにたどり着くだろう。

「ただ……はは、直ぐに出られるから、だなんて言ったって戻ってもらえるわけがない。きっと力づくになる。でもそんな力なんて……」

自身の無力さを改めて感じ、そんな自分自身をまた嘲笑するかのように笑みがこぼれる。

そもそも私がこの世界に来て、麦わらの一味の力になりたいだなんてあまりにも無謀だったんじゃ────


「───へへ、やっと見つけたぞ!」
「……!?」

俯いていた顔をあげると、じりじりと近づく者どもの存在に『名前』は気づいた。

姿は正直小汚く、この船に似合うようには見えず寧ろ貧困に苦しんでいるように見える。それに………とても友好的には見えない。

「……誰?」
「へへ、間違いねェ!お前があの女だよなあ!?」
「!?」

──嫌な予感がする。『名前』は木箱から立ち上がり、荷物を手に取り警戒する。

「悪く思うなよ、お前のせいで──いやお前の主人に俺たちはドン底に落とされたんだ!」
「テゾーロのクソ野郎のせいでなァ!」

「……何それ、こうなる可能性はアンタらもわかった上でこの船に乗り込んだんでしょう?」
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