第10章 砂と予兆
ひとまずいい形に収めきったのではないだろうか。ふぅ、と呼吸を整えて背を向けていたパソコンに向かう。画面には完了しましたとの表記。
丁度テゾーロが来た頃ぐらいに刺していたUSBが機械内の重要なデータを丁度よく移動させ終わっていた。
『名前』はそれを抜き取り適当な鞄にいれて身支度を始める。その様子にテゾーロが反応する。
「何をしている」
「明後日までここを空けるので」
「は?」
『名前』は最後に新聞、特に物語に大きく関わるような内容のものを詰め込んだジュラルミンケースを持った。
「ってことで、外泊してきます」
「!?」
は?と言いたげなテゾーロを無視し話を一段落できた『名前』は清々しい笑顔で続ける。
クロコダイルはもうどうでもよさそうにソファでくつろいでいた。
「確かにクロコダイル様の言う通り、寝首をかかれたり重要なデータを消されるっていうリスクがありますし……それにいくら個人的に信用できるとはいえ部下に示しがつきませんよね!」
「……」
「ってことで、お疲れ様です!」
風のように去っていった『名前』にテゾーロはただただ見送ることしかできなかった。
クロコダイルに対して顔を暗くしたかと思えば、信用するとまで言い切り最後は部屋を空け渡す彼女に翻弄されっぱなしである。
「……何なんだあいつは」
「諦めろ、アレはネジが飛んでる」
「!」
困惑していたテゾーロにクロコダイルが声をかける。それにより今彼は今クロコダイルと2人きりなのだと気づいた。
「フ、ハハハ──まさかお前があいつを知っているとは」
「あァ……だが多分お前の思ってるような知り方じゃねェよ」
クロコダイルは咥えていた葉巻を灰皿に押し付け火を鎮火させる
「俺はつい最近知った、いや知らされた──俺もお前も知らない意味のわからねェ野郎どもにな」
「私も?」
「そうだ……そしてそいつらに俺は"無理やり"脱獄させられた」
「!?」
クロコダイルは胸元から一つの手配書をテーブルにひろげる。そこには『名前』の顔、そしてONLY ALIVE 、額は3000万ベリーと記載されていた。
「『名前』……!?どこでこれを」
「お前の力でも手にいれていないってことは、ククク……相当だなあの女は」
クロコダイルはテゾーロの狼狽える様に嘲笑した。