第10章 砂と予兆
クロコダイルが丁寧に説明をするも彼女はすました顔で一部肯定しつつ、それでいて遠回しに否定する。
彼女がそうする理由が何一つ見えてこない上に説明しても納得しない。
そんな彼女にクロコダイルは思わず彼らしくなく焦った。葉巻を落としかけた姿を見ても対する彼女は一切表情を崩すことなく
「ええ、私は貴方を信用していますよ」
そう言い切った。
「……とても、俺には理解しきれねェな」
「そう言わないでくださいよ、一生ここにいろだなんて言ってないんですから」
「あ?」
クロコダイルがまだ何か言うのかと若干キレ調子に聞き返すとそれに反応したテゾーロも『名前』に視線を向けた。それに気づいた『名前』はテゾーロに一度顔を向ける。
「今回の件、私に任せてくれませんか?責任はとると言った手前ですし」
もう何を言ってもダメだと諦めたのか、彼は目を細めてもう呆れ疲れたと言いたげな表情のままため息をつく
「……私はもう知らん、好きにしろ」
ふい、とテゾーロは『名前』から顔を背け『名前』とクロコダイルから手を引く姿勢をとった。
「ありがとうございます──ではクロコダイル様、一応確認しますが貴方はこの部屋で寝泊まりしていただくことに不満はありませんか?」
彼もまた、テゾーロのように 面倒くさい が勝り『名前』の考えにのろうと諦めて大人しくなる
「俺はとくにねェが、お前はそれでいいのかよ」
「良かった、では話を進めますね」
「……あァ……お前がここまで言うなら何か策があるんだろうな?」
「策という程でもないですが、明日明後日まで貴方が脱獄したことが世に知らされないようにしたいだけですし。」
「……つまり何が言いたい」
「貴方がここで身を隠していただく間にグラン・テゾーロ傘下の海賊を用意します。彼らが来たら貴方は船に乗ってどこかへ行っていただいて大丈夫です。それ以降の貴方の行動を制限する権力は私にはありませんし。」
「?、お前の目的は俺が今ここにいる事実を客に知られたくないんじゃなかったのか」
「1日2日程度なら沈静化も容易いです、それぐらいなら部下にもできますから……ただ変に暴れるのは辞めてくださいね」
さァな と応えはぐらかす彼だが今は彼も危うい立ち位置、この様子だとダズは連れていないようだし部下がいない彼なら言うことを聞いてくれるだろう。