第2章 グラン・テゾーロ
「(能力者では無いけれど……重要人物ではあるから油断は出来ないな)」
席に座り『名前』は比較的軽い食事はないか探した。
が、どれもステーキを主にしているので重たそうだ。
「(肉々しいな……)店長さん、少し頼みがあるんだけれど」
「?なんだ、金がないってならお引き取り願うぞ」
凄みをもった目をものともせずに『名前』は続けた。
「いいえ、お金なら沢山ある。このステーキの倍額でもいいから、軽い食事をつくってほしくて」
「軽い食事……?って、え!?」
『名前』はそのままの流れでジュラルミンケースを持ち上げて軽く中身を見せた。ざっと億超えなのはわかってもらえたはずだろう。
「だめですかね……それならコーヒーだけでも__」
「!いや、わかった。すぐつくろう」
そういいダブルダウンは慌てて厨房へ消えた
まあこのドレス姿とはいえ億超えのジュラルミンケースを見せられてはヤバい人が来たとは思うだろう。慌てるのも仕方がない。
……私は何も出来ない奴隷だけど。
ふぅと一息ついていると少年が駆け寄ってきた。
ん、と気づいて振り返ると見覚えのある顔だと気づく。
この店で働く少年、リッカだと。
「お姉さんはい、珈琲」
「あぁ、ありがとう」
にこりと微笑むが若干怖がっている。
確かに周りを見ると荒くれ物や着飾った海軍ばかりだしこんな豪華な服装をしているのは私だけだ。
……それに1番はこのジュラルミンケースが問題だろう。
「お姉さんってなんか偉い人なのか?」
「……ううん、全然」
「嘘だ、じゃあなんでそんなにお金__」
リッカが言いかけたが食事を運んできたダブルダウンに止められた
「おい、サボるなリッカ……働け」
「!すみません」
リッカはそういいパタパタとどこかへ消えた
ダブルダウンはすみませんと謝りながら目の前にサンドウィッチを差し出した
「!」
「これで良かったか?」
「……希望通り、ありがとうございます」
『名前』はぺこりとお辞儀をしサンドウィッチに手をつけた。
肉厚のステーキが挟まれたサンドウィッチ、そしてサラダを挟んだサンドウィッチ……ダブルダウン流石だ、と思いながら頬張る。
食べているとそっとダブルダウンが話しかけてきた
「……でもお客さん、なんでこんなところに?」
「!それは……」